記事のサマリー(TL;DR)
- サイボウズ26卒QAエンジニアが2026年6月〜7月の5週間、配属先以外の5チームをローテーション体験
- Clara(グローバル向け)・Izumo(日本向け)販売管理システムから認証基盤・モバイルアプリまで横断的に習得
- Garoonチームの最終発表では、ISO/IEC 25010の品質特性を整理の軸として活用する視点を習得
国内SaaS開発現場における新卒QAオンボーディングの設計ポイント
サイボウズのチーム体験プログラムは、「配属先以外のチームを5週間かけて巡る」という構造が特徴的です。日本国内の業務SaaS開発現場では、QAエンジニアが担当製品のテストのみに特化しがちですが、このプログラムでは販売管理・ミドルウェア・認証基盤・モバイル・グループウェアという異なる技術レイヤーに触れることで、製品全体を俯瞰する視点を早期に養うことを意図しています。特に、ISO/IEC 25010の品質特性をチームの活動整理に活用するアドバイスは、品質エンジニアリングの文脈で実務に接続しやすい形に落とし込んだ好例といえます。kintoneやGaroonのようなマルチプロダクト環境を抱える企業では、QA人材が複数の製品・システムの接点を理解することが障害対応やリグレッションテスト設計の精度に直結するため、こうした横断研修の設計は参考になります。
詳細
チーム体験とは
チーム体験は、「サイボウズにどんな製品があるのかを知り、開発・テスト・リリースの流れを学ぶ」ことを目的とした取り組みです。今年(2026年)は、チーム体験前に配属先が決まっていたため、配属先以外のチームを回る形式が採用されました。
チーム体験スケジュール
2026年6月から1週間ずつ、計5チームを体験しました。各チームでの共通事項(チーム概要説明・チーム会議への参加)は以下の「体験したこと」からは除いています。
| 期間 | チーム名 | 体験したこと |
|---|---|---|
| 2026/06/01〜06/05 | 販売管理システム開発部(SSあかつき・SSはるか・SSひてん) | リリース作業見学・モブ見学・販売管理システム画面操作 |
| 2026/06/08〜06/12 | サブシステムチーム | ミドルウェアの説明・動作確認作業をモブ形式で毎日実施 |
| 2026/06/15〜06/19 | Slashチーム | 認証認可(SAML・OAuth)の説明・回帰試験の実施 |
| 2026/06/22〜06/26 | Office Mobileチーム(iOS🐮うし・Android🐤とり) | サイボウズOfficeモバイルアプリ(iOS)の操作 |
| 2026/06/29〜07/03 | Garoonチーム(Spica・Tsukimi・Yukimi) | 各チームの業務・特色のまとめと発表 |
第1週:販売管理システム開発部
初週は、SSあかつき・SSはるか・SSひてんの3チームにお世話になりました。チーム名はいずれも科学衛星・探査機の名称に由来しています。
初日に、Clara(グローバル向け販売管理システム)のリリース作業を見学。その後、試験観点相談モブ・改修確認モブ・試験実施モブに参加し、販売管理システム開発部およびQAの業務理解を深めました。仕様書を参照しながらClaraとIzumo(日本向け販売管理システム)のテスト画面にも触れ、お客様用オンラインストア・バックオフィス用システム・販売パートナー専用ストアなど、同じ「販売管理」でも利用者ごとに入り口が異なることを確認しました。
感想:
チーム体験の初日からリリースに立ち会えたことは貴重な経験でした。リリースを「特別な大イベント」だと思っていましたが、QAの担当者がテスト未完了の案件が混入していないかを丁寧に確認しながら、日常業務として淡々と進める様子が印象的でした。「月末・月初は決済処理が走るためリリースを避ける」というお客様への配慮についても学びになりました。
改修確認モブでは、先輩QAがテスト観点をスラスラと書き出していく姿に刺激を受け、普段から製品仕様に目を向けて深く理解する姿勢を見習いたいと感じました。
第2週:サブシステムチーム
サイボウズのクラウド製品を裏側から支えるミドルウェアの開発・運用を担うチームです。昨年まではCyDE-Cという名称でしたが、2026年からサブシステムチームに改称されました(担当領域は変わらず)。
毎日、午前・午後のモブ形式でミドルウェアを起動・停止しながら画面の裏側の処理を学びました。メール送信の仕組み、不要ファイルの削除機能、検索インデックスの構築機能など、日替わりで1つずつミドルウェアを体験する1週間でした。
感想:
「コマンドを実行する前に、そのコマンドの目的と実行結果を確かめてから手を動かす」という先輩QAのアドバイスで理解が大きく深まりました。queue(処理待ちの列)にjob(仕事)が積まれ、worker(処理役)によって処理される過程を手を動かして確認し、ログを読んで「リクエストが本当に1件ずつ処理されているか」をレスポンスタイムの変化から検証する体験を通じて、画面からは見えない場所で製品を支える仕事の存在をリアルに実感しました。
第3週:Slashチーム
cybozu.com共通管理画面・プロフィール画面・ログイン画面・SAML認証の開発運用を担うチームです。
チーム体験では、認証認可(SAML・OAuth)や複数ドメイン管理機能の説明を受けました。仕様書を見ながらテスト画面を操作する時間に加えて、週後半には複数ドメイン管理機能のテスト観点出し・一部テスト実施・回帰試験の実施を担当しました。
感想:
テスト観点出しでは、まず自分で考えた後にチームQA担当者の観点と見比べて考慮漏れを確認しました。おおよその観点が合致していたことで自信につながりました。
最大の学びは「不具合への着目の仕方」です。不具合を1件ずつ個別に見るのではなく、似た不具合をまとめて眺めると「この辺りが怪しい」という傾向が見えてくるという視点は、今後のテスト設計に活かせる実践的な知見でした。
第4週:Office Mobileチーム
サイボウズ Officeのモバイルアプリを担当するチームで、iOSアプリ担当の🐮(うし)チームとAndroidアプリ担当の🐤(とり)チームに分かれています。今回は主にiOS担当の🐮チームの1週間を体験しました。
リリース前のアプリを実機で確認できる環境の構築、実機画面をミラーリングするアプリ「Vysor」のインストールなど、テスト開始前の環境準備から取り組みました。
感想:
テスト用アプリをインストールできる状態になるまで累計3時間ほど格闘するなど、テスト環境構築の難しさを身をもって体験しました。それでもチームメンバーのサポートで無事に環境構築を完了でき、「テストを始める前の環境づくりから一筋縄ではいかない」という現実を学びました。
また、会議で「話についていけない」と正直に伝えたところ、「1年目は質問し放題だから大丈夫」と言ってもらえたことが大きな支えになりました。
第5週:Garoonチーム
最終週は、担当領域の異なる3チーム(Spica・Tsukimi・Yukimi)の先輩QAからそれぞれチームの説明を受け、最終日にその内容をまとめて発表する課題に取り組みました。
これまでの4チームは製品や機能ごとに分かれていましたが、Garoonチームでは役割ごとにチームが分かれており、その構造の違いが新鮮でした。
感想:
発表をまとめる段階で、聞いた情報をそのまま並べるだけではまとまりに欠けると悩んでいたところ、先輩QAから「ISO/IEC 25010の品質特性に紐づけてみると、チームの特性が見えてくる」というアドバイスをもらいました。「このチームの活動は品質のどの側面を支えているか」と問いかけながら整理することで、バラバラに聞いた話が一つの地図になっていく感覚を得られました。品質特性を整理の軸にするという発想は自分にはなかったため、大きな学びになりました。
5週間を通して
主に画面を触ってテストをしていた私にとって、この5週間は「画面より手前の世界」を知る時間でした。最初は呪文にしか見えなかったコマンドも、「なぜこう動くのか?」を一つずつ確かめるうちに少しずつ読めるようになりました。複雑に絡み合ったシステムが自分の中で腑に落ちる瞬間が、思いのほか面白かったです。
おわりに
7月からは配属先チームに合流しています。チーム体験で得た多くの学びを、これからの業務で活かしていきたいと思います。5週間お世話になった各チームの皆さん、本当にありがとうございました。