記事のサマリー(TL;DR)
- サイボウズが TSKaigi 2026 にゴールドスポンサー参加。kintone の Google Closure Tools → React + TypeScript 移行を公開説明
- 登壇セッションでは kintone 実コードの
@ts-ignore等をAI解析し、7つの頻出パターンと解決策を提示 - 社内で ESLint から Oxlint への移行を検討中。リンターをAIコーディングのガードレールと位置づける方針を明示
kintone・TypeScript 移行が進む中、国内 SaaS 開発チームが注目すべき技術動向
kintone は長年 Google Closure Tools で構築されてきたフロントエンドを、React と TypeScript へ段階的に移行している。この規模の移行は「技術的負債の棚卸し」と「型安全性の担保」を同時に求められる難しい局面であり、サイボウズの登壇が示した「AI による @ts-ignore パターン分析」は、既存の大規模 JavaScript コードベースを抱える国内 SaaS 企業にとって具体的な参考事例となります。
また、リンターのカスタムルールをAI時代のコード品質ガードレールとして整備するという視点は、kintone カスタマイズや Salesforce Apex・JavaScript を扱う内製開発チームにもそのまま適用できる考え方です。ESLint から Oxlint への移行は処理速度の大幅な改善をもたらすとされており、CI パイプラインのボトルネック解消を検討しているチームは動向を追う価値があります。
詳細
TSKaigi 2026 とサイボウズブースの概要
2026年5月22〜23日に開催された TSKaigi 2026 に、サイボウズはゴールドスポンサーとして協賛しブースを出展しました。
ブースでは以下の2つの企画を実施しました。
- 「サイボウズのフロントエンドの印象を教えてください!」 — 付箋を貼ってもらう形式
- 「サイボウズ エンジニア社員が何でも話します!!」 — 付箋記入または既存トピックから選ぶ形式
回答者にはノベルティを配布し、多くの参加者と対話する場を設けました。
ブースで話題になったトピック
kintone のフロントエンド基盤刷新
来場者から最も関心を集めたのが、kintone のフロントエンド基盤刷新でした。kintone は現在、Google Closure Tools から React への移行を進めており、その過程で JavaScript から TypeScript への移行も並行して実施しています。
この取り組みの詳細は SpeakerDeck で公開されているスライドで確認できます。
組織内での AI 活用
AI 活用についての質問も多数寄せられました。kintone のフロントエンド開発における AI 活用については、サイボウズの技術ブログや Zenn の記事で発信が続けられています。
コーポレートロゴのアップデートと Web 標準への取り組み
ブース前日にコーポレートロゴのアップデートに関するプレスリリースが公開されたこともあり、来場者からロゴに関する言及が多くありました。今回のノベルティやパネルには旧ロゴが使われていましたが、次回以降は新ロゴに切り替える予定です。
W3C や Web 標準に関するイメージを持つ来場者も多く、継続して発信してきた「Web 標準動向」の読者が会場に多数いたことが確認できました。今回のブースでは W3C とサイボウズのロゴを並べたパネルを設置し、W3C の新ロゴのステッカーを配布。今後も Web 標準周りの取り組みと情報発信を継続するとしています。
Frontend Weekly・Frontend Monthly・サイボウズ フロントエンド通信などの発信活動も多くの来場者に認知されていました。
OSS とアクセシビリティ
サイボウズは GitHub Organization でいくつかのパッケージを OSS として公開しており、OSS への寄付も実施しています。2026年3月にはフロントエンド関連 OSS への追加寄付を開始し、OSS ポリシーも公開しました。
アクセシビリティについては、kintone Design System や新コーポレートロゴにおけるアクセシビリティ上の考慮が印象に残った来場者が多かったとのこと。ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)での活動も継続しています。
登壇セッション:「業務に残された『良くない型』で考える『TypeScriptの難しさ』」
サイボウズの Saji 氏が登壇し、kintone の実コードベースに残存する @ts-ignore・@ts-expect-error・as キャストを AI で分析した結果を発表しました。分析によって 7つの頻出パターンを特定し、それぞれに対する解決策を提示。型安全なコードへと移行するための具体的な知見を共有するセッションとなりました。
登壇者自身も「複雑なロジックが多いと型が複雑になりがち」と認めつつ、型ガードの適切な実装や定期的な棚卸しといった対処法を提示しました。今後は kintone の複雑なドメインロジックに起因する課題についても発信を続けるとしています。
気になったセッション:Oxlint と AI 時代のリンター戦略
執筆者が注目したセッションは以下の3本です。
- 「Oxlint はいかにして tsgolint の lint rule を呼び出しているのか」
- 「次世代リンターで探る、tsgo 時代における型認識カスタムルールの現実解」
- 「静的解析への投資がAI時代のコード品質を支える──カスタム ESLint ルールの設計と運用」
今回の TSKaigi 2026 では Oxlint や linter 系セッションが多数あり、注目度の高さが伺えました。
執筆者自身は個人的に Oxlint のアクセシビリティルールへの contribute を行っており、tsgo 側の内部構造については今回初めて知ることが多かったと述べています。
また、「リポジトリ固有のカスタム lint ルールの整備」については自チームでも十分できていないと振り返り、今後の課題として取り組む方針を示しました。さらに、サイボウズ社内でも ESLint から Oxlint への移行を検討開始しており、外部プラグインの充実を期待しつつ、自らも貢献できる部分を探っていくとしています。
まとめ
昨年の JSConf、2026年1月の BuriKaigi に続き、サイボウズ社員と参加者が対話するスタイルのブースを TSKaigi 2026 でも展開。多くの来場者との交流を通じて、フロントエンド技術への取り組みを広く発信する機会となりました。