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2026.05.27

UMGとTikTokがライセンス契約を更新——無許可AI音楽の排除で合意

記事のサマリー(TL;DR)

  • UMGとTikTokが2026年5月に契約更新。無許可AI生成音楽の削除とアーティスト帰属の改善を明文化
  • 2024年にUMGが音楽カタログを一時引き上げた対立が、今回の合意で大きく転換
  • EU・米国州法のAI規制強化を背景に、本合意が他プラットフォームの「ガバナンス雛型」になりうる

国内音楽配信・コンテンツプラットフォーム事業者が注目すべき権利保護の動向

今回のUMG・TikTok合意は、日本市場でも無視できない影響を持ちます。日本はJASRACや次世代版権管理団体が音楽著作権を厳格に管理しており、TikTok Japan上での楽曲利用も国内ライセンス契約と連動しています。AI生成音楽が「似せた声」「類似メロディ」で著作隣接権を侵害するケースは国内でも増加傾向にあり、文化庁の「AIと著作権に関する考え方」(2024年3月)でも同種の問題が論点に上がっています。

プラットフォーム側が無許可AI音楽を能動的に検出・削除する仕組みを契約条項として明記した点は、国内のUGCプラットフォームや音楽配信サービスにとって先行事例となります。特にショート動画・ライブコマース領域でBGMや効果音にAI生成楽曲を使用するケースが増えているEC事業者も、利用楽曲の権利クリアランス体制を改めて確認する必要があります。

詳細

UMGとTikTokの契約更新が意味するもの

Universal Music Group(ユニバーサル ミュージック グループ)とTikTokは2026年5月、ライセンス契約の更新を共同発表しました。両社の声明によれば、今回の合意は「人間のアーティスト性を促進するAI保護と、アーティスト・ソングライターへの収益還流を確実にするプラットフォーム経済の仕組みを、TikTokとUMGが先駆けて推進するコミットメントを継続するもの」と位置づけられています。具体的には、TikTok上から無許可のAI生成音楽を削除すること、アーティストおよびソングライターへの帰属表示(アトリビューション)をさらに改善することの2点が明記されました。

2024年の対立から合意へ——関係修復の背景

UMGとTikTokの関係は長年にわたり緊張をはらんでいました。UMGはプラットフォーム各社・ストリーミングサービス・AI企業に対し、コンテンツモデレーションの厳格化を長期にわたって求めてきました。2024年には対立が頂点に達し、UMGはTikTokがAI生成音楽と著作権に関する問題に十分対処していないとして、自社の音楽カタログをTikTokから一時的に引き上げました。この決断はプラットフォーム全体に波紋を広げ、人気楽曲を使ったユーザー動画が一夜にして消える事態となり、TikTokがメジャーレーベルのライセンスにいかに依存しているかを改めて示しました。

今回の更新合意は、そのような対立から関係が大きく転換したことを示すものです。

AI生成音楽が引き起こすアーティスト権利問題

TikTokが偽造・無許可楽曲への取り締まりを強化するタイミングは重要です。音楽業界全体がAI生成コンテンツの急増に直面しており、アーティストの声を模倣したり、ストリーミングアルゴリズムを悪用する偽造楽曲を生み出すAIツールへの懸念は近年急速に高まっています。

DrakeやThe Weekndのような著名アーティストを模倣したバイラルなAI生成楽曲は、削除前に数百万回再生を記録するケースもあり、業界全体に広く衝撃を与えました。こうした事例が、メジャーレーベルとプラットフォームの間でより明確な契約条項を求める機運を高めた背景にあります。

業界標準となりうるガバナンスの雛型

今回の合意は、AI・知的財産・プラットフォームアカウンタビリティが交差する領域で、テック業界全体が進む方向性の「雛型」としても機能しうると見られています。

EUはAI生成コンテンツに対する規制を強化しており、米国でも各州が同様の方向に動いています。こうした規制圧力を背景に、他のプラットフォームに対しても同様のガバナンス枠組みを正式化するよう求める声は今後さらに強まると予想されます。

TikTokの「TikTok for Artists」——権利者への価値提供強化

TikTokは音楽業界に対し、同プラットフォームがアーティストや権利者に大きな収益をもたらせることを示す取り組みを続けています。昨年(2025年)には「TikTok for Artists(TikTokアーティスト向けインサイト)」を立ち上げ、アーティストがプロモーション活動を強化し、音楽レーベルがデータにアクセスできるプラットフォームとして機能し始めています。今回の契約更新は、そうした信頼構築の取り組みと一体の動きとして理解できます。