記事のサマリー(TL;DR)
- OpenAI研究者 Miles Wang が退職し、AI創薬スタートアップを評価額20億ドルで設立交渉中
- 資金調達リードはLightspeed、調達目標額は約2億ドル(約290億円)
- 既存のFDA承認済み薬の新用途発見を軸とし、複数のOpenAI研究者が合流予定
日本の製薬・ライフサイエンス企業が注目すべきAI創薬投資トレンド
2025〜2026年にかけて、AI創薬領域への投資が急加速しています。Chai Discovery(OpenAI出身の共同創業者Josh Meierが関与)が2025年に評価額38億ドルで4億ドルを調達し、Google DeepMindのスピンアウトであるIsomorphic Labsも2026年5月に21億ドルのシリーズBを完了しました。今回のMiles Wang案件はこの流れの延長線上にあります。
日本では武田薬品工業やエーザイ、第一三共といった大手製薬が社内AI研究部門を強化する一方、AI創薬スタートアップとの協業・出資も増加しています。特に「ドラッグリポジショニング(既存薬の新用途探索)」は、FDA承認済み薬を対象とするため安全性試験を省略できるフェーズが多く、新薬開発と比較して収益化までのリードタイムが大幅に短縮されます。Wang氏の新会社がこのアプローチを採用しているとすれば、出口戦略(大手製薬へのライセンス契約・買収)を描きやすく、投資家が高バリュエーションを付けやすい構造と言えます。
国内の製薬・バイオスタートアップにとっては、海外勢が既存薬リポジショニング × LLMベースの分子予測モデルで高速に事業化を進める現状を踏まえ、自社パイプラインへのAI適用とグローバルVC調達の両面で戦略の見直しが求められる局面です。
詳細
Miles Wang の経歴と今回の動き
Miles Wang 氏は2024年、ハーバード大学でコンピューターサイエンスの学士課程を中退してOpenAIに入社しました。在籍中はAIモデルが科学的発見を自動化・加速させる方法を評価する研究論文を共著するなど、科学・生物学的発見へのAI応用を専門としていました。
今回の退職とスタートアップ設立に伴い、複数のOpenAI研究者が同社に参加する見込みです。TechCrunchの取材に対し、Wang氏は資金調達額と会社の詳細説明には異議を唱えたものの、正確な数字や詳細は開示しませんでした。Lightspeedはコメントを控えています。交渉はまだ継続中であり、条件は変わる可能性があります。
新会社が狙う「ドラッグリポジショニング」とは
複数の情報筋によると、Wang氏の新会社は以下のようなアプローチに注力するとされています。
- 既存のFDA承認済み薬の新用途発見:安全性試験済みのため、新薬開発と比較して収益化までの期間が大幅に短縮される
- 過去に治験で失敗した薬候補の再評価:異なる適応症での有効性をAIモデルが探索
従来の新薬開発は承認まで10〜15年・数千億円規模の投資が必要ですが、ドラッグリポジショニングは既知の安全性プロファイルを活用することで開発コストとリスクを大きく下げられる点が投資家にとっての訴求ポイントです。
AI創薬領域における直近の大型調達
Wang氏の案件は、AI創薬への資本流入が加速する大きな流れの一部です。
| 企業 | 調達額 | バリュエーション | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Chai Discovery | 4億ドル | 38億ドル | 分子間相互作用の予測モデル開発。共同創業者Josh MeierもOpenAI出身 |
| Isomorphic Labs(Google DeepMindスピンアウト) | 21億ドル(シリーズB) | 非公開 | 2026年5月完了 |
| Miles Wang 新会社(交渉中) | 約2億ドル | 約20億ドル | 設立前の段階から高バリュエーション |
設立前の段階でシード〜シリーズA相当の評価額が20億ドルに達しているのは、創業者の経歴(OpenAI)と市場の期待値の高さを反映しています。近年、大学を中退した若い創業者への投資に対して投資家が改めて積極的になっている傾向もこの案件に表れています。
今後の焦点
Wang氏がOpenAI在籍中に取り組んだ「AIによる科学的発見の加速」という研究テーマは、創薬分野への応用と直結しています。交渉の最終合意と会社正式設立が確認され次第、事業内容や資金調達の正確な詳細が明らかになる見通しです。