記事のサマリー(TL;DR)
- OpenAI が「Summer Club」と称し、インフルエンサーをニューヨーク州北部の高級リゾートに招待。ファームトゥテーブルディナーや養蜂体験などを提供
- 目的は新製品 ChatGPT Work の使い方をクリエイターに体験させること。公式スポークスマンは「教育主導のイベント」と説明
- AIデータセンターの環境負荷・国防総省との2億ドル契約・オハイオ州5,000億ドル規模のデータセンター計画が重なり、「贅沢な自然リゾートで環境破壊企業をPR」という批判が炎上
国内AIマーケティング担当者・PR戦略立案者が注目すべき点
OpenAI の今回の炎上は、AI企業のインフルエンサーマーケティングが持つ構造的リスクを端的に示しています。日本でも ChatGPT や Claude の法人導入が加速するなか、AI製品のPRキャンペーンに対するステークホルダーの目線は厳しくなっています。特に「環境負荷」「軍事利用」「著作権」のような社会的論点が顕在化している製品カテゴリでは、豪華イベントによるポジティブな口コミ狙いが逆効果になるリスクがあります。
AnthropicがClaudeのインフルエンサーディナーを開催し、Microsoft Copilotがスーパーボウルへの招待旅行を実施した事例は国内では大きな反応を生みませんでした。それと比較して、OpenAIの今回の件が「大きな神経を逆撫でした(struck a nerve)」と TechCrunch が指摘している背景には、OpenAIが500億ドル規模のデータセンター投資計画を発表した直後というタイミングの悪さがあります。日本企業がAI関連PRを設計する際も、同様の「文脈の衝突」が起きていないか事前に精査する必要があります。
詳細
OpenAI、初のインフルエンサー招待イベント「Summer Club」を開催
2025年夏、OpenAI はニューヨーク州北部の高級リゾートで「Summer Club」と銘打った招待イベントを実施しました。参加したのは少数のインフルエンサー・クリエイターで、ファームトゥテーブルディナー、養蜂体験、ペインティングワークショップなど、ウェルネス系のプログラムが組まれていました。投稿された動画はスタイリッシュかつ軽やかなトーンでしたが、コメント欄の反応は正反対でした。
あるインフルエンサーの TikTok・Instagram には「良いホテルに泊まるために魂を売った」というコメントが多数寄せられ、別の参加者にはデータセンターの環境負荷についての見解を問うコメントが相次ぎました。さらに3人目の参加者は TechCrunch が取材に連絡した後、旅行に関連した動画を削除しています(別の動画は残存)。
OpenAI の公式説明:「教育主導のイベント」
OpenAI のスポークスマン、Drew Pusateri 氏は TechCrunch に対し、このイベントは新製品 ChatGPT Work(文書作成やプレゼン資料作成を支援する機能)の実際の使い方をクリエイターに体験してもらうための「教育主導型」の場だったと説明しました。
「クリエイターは私たちのコミュニティの重要な一員であり、人々が情報を得て製品を知る上で欠かせない存在です。私たちは、AIがより普及する中での健全な議論を歓迎し、私たちと関わり、イベントに参加し、厳しい質問をし、ともに学ぼうとするクリエイターを大切にしています」(Pusateri 氏)
VP 就任で本格化する有名人・インフルエンサー戦略
今年2月、Vanity Fair は OpenAI が「セレブリティ・ウィスパラー(celebrity whisperer)」として知られる Charles Porch 氏をグローバルクリエイティブパートナーシップ担当初代 VP として採用したと報じています。Porch 氏は Instagram でグローバルパートナーシップ VP を務めていた人物で、就任に際し「クリエイティブコミュニティと対話しながら最良の製品をどう作るかを考えること」が役割だと述べ、AIツールとの関係性を深く理解するための「リスニングツアー」を実施すると表明していました。
他のAI企業の類似事例との比較
インフルエンサー活用自体は OpenAI に限った話ではありません。Anthropic は Claude のプロモーションのためのインフルエンサー向けブランドディナーを開催し、Microsoft Copilot は2025年2月のスーパーボウルへの招待旅行を実施したとニュースレター「Sarah and Kate」が報じています。ところが、それらの事例が今回ほど大きな批判を受けることはありませんでした。
炎上を増幅した「タイミングの問題」
今回の批判が特に大きかった要因として、批判者たちが挙げているのは以下の点です。
- OpenAI がオハイオ州に 5,000億ドル(約75兆円)規模のデータセンターを建設する契約を締結予定と報じられていた時期と重なった
- AI データセンターが電力・水・土地資源に与える社会生態学的影響が国際的に注目を集めていた
- OpenAI が 国防総省(DoD)と2億ドルの契約を結んでいるという事実も批判の材料になった
あるコメント投稿者は TechCrunch に対し「世界は今、大変な時期にある。1泊5,000ドルのスイートを自慢する場合ではない」と語り、「このような豪華イベントは、AI に対して否定的な意見を持つ人々に弾薬を与えるだけ」と述べています。
一方、参加したあるインフルエンサーは LinkedIn に「OpenAI 技術の裏側のヒントに興味を持ってもらえると思っていた。こんなに反AIな人が多いとは一瞬も考えなかった」と投稿し、予想外の反響に困惑している様子を示しました。