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2026.09.02

Empirik が2100万ドル調達——障害発生前にインフラ異常を予測するAIオブザーバビリティ

記事のサマリー(TL;DR)

  • Sequoia がインキュベートした Empirik、Sequoia・Canapi・Alumni Ventures から2100万ドルのシード調達を発表
  • S&P Global・Guardant Health など Fortune 500 企業を含む顧客を既に獲得し、独立スタートアップとして始動
  • 「インフラ向けの Cursor / Claude Code」を目指し、変更ごとの波及リスクをAIが自律判断・制御

国内 SRE・DevOps チームが注目すべき「変更管理AI」の台頭

インフラ障害対策の主流は長らく「障害発生後の迅速な対応」でした。しかし Empirik が示すアプローチは「変更を加える前に波及リスクを予測する」というものです。日本でも大規模なクラウド移行や Kubernetes 環境への集約が進む中、複雑化した依存関係を人手で把握する限界は明確になっています。SRE(Site Reliability Engineering)チームが慢性的な人手不足に直面している国内の金融・EC・SaaS 事業者にとって、定型的なトラブルシューティングをAIにオフロードする発想は現実的な選択肢として浮上しつつあります。Shopify Plus や kintone のような多層 SaaS 構成の上に自社システムを載せている企業では、サードパーティ依存の変更管理が特に難しく、このカテゴリのツールが国内展開される際の訴求点になる可能性があります。

詳細

Sequoia 内部から生まれたインサイト

Empirik の共同創業者 Avon Puri は、Sequoia Capital に最高デジタル・情報責任者(CDIO)として参画する前、RubrikやVMwareでインフラを10年以上にわたって統括してきたエンジニアです。3年前、大規模言語モデル(LLM)が実用的な性能を示し始めた時期に、Puri はSequoia のITリーダーである Sudheer Dhurjati とともに「AIがインフラ障害の事前予防を自律的に担えるのではないか」という仮説を立てました。

障害発生後に対処するのではなく、障害の予兆となるシステム変更を検知し、その波及範囲を事前に推測する——これが Empirik の基本思想です。

製品の仕組み:自律型「交通整理役」

Empirik はインフラ全体にわたってシステム変更を追跡し、変更ごとの潜在的なリスクを評価します。具体的には次の3段階で機能します。

  • 低リスク変更は自動承認(通過を許可)
  • 中程度の変更にはガードレールを設定(一定の条件下でのみ許可)
  • 高リスクの変更は人間によるレビューにフラグアップ

この「自律型インフラエンジニア」として機能することで、DevOps チームや SRE チームは日常的なトラブルシューティングをオフロードし、より優先度の高い業務に集中できます。

Sequoia パートナーの Bogomil Balkansky は TechCrunch に対し、「システムを稼働させ続けるために常に多額のコストが投じられてきた。しかし既存のオブザーバビリティツールの大半は、複雑なシステム依存関係を理解できていない」と指摘し、Empirik を大規模環境における変更追跡に特化した先駆的ツールの一つと位置付けています。

調達・組織・顧客

Empirik は2023年に Sequoia 内でインキュベーションを開始。今年初めに、元 Quantum Metric CPO かつ Salesforce のオブザーバビリティ担当 VP を務めた Kartik Chandrayana を CEO に迎えました。今回の2100万ドルのシード資金は Sequoia・Canapi・Alumni Ventures が共同出資しています。

顧客は今年の稼働開始以来、スタートアップから Fortune 500 企業まで拡大しており、S&P Global・Guardant Health・大手消費財(CPG)企業が名を連ねます。

「インフラ版 Cursor」というビジョン

CEO の Chandrayana は、Empirik の目標を「Cursor や Claude Code がソフトウェア開発者にしたことを、インフラエンジニアに対して実現すること」と表現します。AIが開発速度を急激に押し上げている今、インフラ側でも変更頻度が増加しています。その変化に追いつくためのツールとして、Empirik はAIエージェントが「ソフトウェア開発に果たした役割を、インフラエンジニアリングで果たす」存在を目指しています。

競合環境については、Balkansky は Empirik が現時点では独自のカテゴリに位置すると主張します。Resolve や Sequoia が出資する Traversal などのAI SRE プラットフォームとは競合ではなく補完関係にあると説明しています。