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2026.09.04

Thinking Machines が400億ドル評価額で10億ドル調達交渉中――Accel がラウンドをリード

記事のサマリー(TL;DR)

  • 元OpenAI CTO Mira Murati 創業の Thinking Machines が、評価額400億ドル(約5.8兆円)で10億ドルの調達を交渉中
  • 既存投資家 Accel がラウンドをリードする方向。年間収益ランレートは1億ドル超を達成
  • 前回調達(評価額120億ドル)から約3倍超の評価額に上昇。共同創業者の一部は OpenAI に復帰済み

生成AI スタートアップの超高倍率評価が日本の AI 投資判断に与える示唆

Thinking Machines の評価額は年間収益ランレート1億ドル超に対して400倍前後のレベニューマルチプルに相当します。これは一般的なSaaSバリュエーション(ARR倍率10〜30倍程度)とは次元が異なる水準であり、「AIラボへの投資はビジネスモデルより創業者・研究者の質を根拠とした先行きへの賭け」という構造を象徴しています。

日本国内でもAI基盤モデルや業務特化型LLMへの投資熱は高まっていますが、このような超高倍率評価のラウンドが成立する背景には、オープンウェイトモデル(Inkling)+独自データでのファインチューニング課金(Tinker プラットフォーム)という二層のマネタイズが機能し始めている点があります。「モデルを公開しながら推論・カスタマイズで収益化する」というパターンは、国内の業務SaaS事業者がLLMを組み込む際のアーキテクチャ選定にも参考になります。

ただし、創業陣の流出(Lilian Weng、Luke Metz らが OpenAI に復帰)というリスクも顕在化しており、調達評価額と実態のギャップを冷静に見極める視点が欠かせません。

詳細

Accel がリードする10億ドルラウンドの概要

The Information の報道(2026年9月3日)によれば、AI研究スタートアップ Thinking Machines が評価額少なくとも 400億ドル(約5.8兆円) での 10億ドル(約1,450億円) 調達に向けた協議を進めています。既存投資家の Accel がラウンドのリード投資家として交渉中であり、同社もACCELも現時点でコメントを出していません。

今回の評価額は、同社が昨年末に目指していたとされる 500億ドル を下回る水準ですが、前回調達時の評価額 120億ドル と比べると3倍超の上昇です。

年間収益ランレートと超高倍率のバリュエーション

同社の財務事情に詳しい関係者によると、年間収益ランレートは1億ドル超に達しています。この数字を前提にすると、400億ドルという評価額は 400倍程度のレベニューマルチプル に相当し、通常のSaaS企業の評価基準(ARR倍率10〜30倍)をはるかに超えた水準です。これはビジネスの現在価値というよりも、将来の市場支配力や技術優位性への期待を大きく織り込んだものと言えます。

オープンウェイトモデル「Inkling」と Tinker プラットフォーム

2026年7月、Thinking Machines は Inkling というオープンウェイトモデルを発表しました。Inkling は単体で公開されるだけでなく、自社プロプライエタリデータを使ったモデルのアダプテーション(ファインチューニング)を Tinker プラットフォーム 上で提供し、利用量ベースのコンピュート料金を課金することで収益を上げる設計になっています。

「モデルをオープンに公開しながら、カスタマイズ・推論サービスで稼ぐ」このモデルは、Meta の Llama や Mistral AI が採用するアプローチに近く、オープンとクローズドの中間を狙うものです。

調達史と投資家陣容

Thinking Machines の前回ラウンドは 20億ドル(約2,900億円) の調達で、史上最大規模のシードファイナンシングの一つとされています。このとき評価額は 120億ドル であり、Andreessen Horowitz(a16z) がリードし、Nvidia・GV・Lightspeed・Conviction Partners が参加しました。

投資家が資金を投じた最大の理由は、創業者 Mira Murati(元OpenAI CTO)および彼女とともに参加した元OpenAI 研究者たちの実績と知名度でした。

創業陣の流出というリスク

その後、同社は複数の著名な人材が離脱するという高プロファイルな出来事を経験しています。共同創業者の一人である Lilian Weng(元 OpenAI の安全研究責任者)や Luke Metz を含む数名が OpenAI に復帰しました。創業者・共同創業者の流出は、スタートアップの技術的優位性や組織文化の継続性に対する不確実性を高める要因であり、400倍超のバリュエーションを正当化するうえで注視すべき点です。

今後の焦点

今回の10億ドルラウンドが正式にクローズされれば、Thinking Machines の評価額は 400億ドル以上で確定し、創業からわずか1年余りでユニコーン(評価額10億ドル超)を大幅に超える存在となります。AIラボへの資金集中が続く中、同社がオープンウェイトモデルとプロプライエタリな推論・カスタマイズサービスを組み合わせたビジネスモデルを軌道に乗せられるかどうかが、次のバリュエーション評価の試金石となります。