記事のサマリー(TL;DR)
- BloombergNEF予測では2035年の米データセンター天然ガス需要が1日180億立方フィート——9か月前の予測からほぼ倍増
- Meta・Microsoft・Google・Amazonが電力網を迂回する自家ガス発電プラントを計画、2035年時点で1日29〜34億立方フィートを消費見込み
- 追加需要が全て顕在化すれば、**米国全体の温室効果ガス排出量の約12%**に相当する日量100万メトリックトンのGHGが増加
国内データセンター事業者・電力多消費ユーザーが注目すべき電力コスト上昇リスク
米国でのガス需要急増は、日本市場にも無視できない波及効果をもたらします。LNG(液化天然ガス)輸出の増加が米国産ガスの価格を押し上げれば、LNG輸入依存度の高い日本の電力市場にも価格転嫁圧力がかかります。国内でも大規模言語モデル(LLM)推論やRAG基盤のためにGPUサーバーを増設する企業が増えていますが、データセンター事業者が電気料金の上昇コストを利用単価に反映すると、クラウドGPUやコロケーション費用の長期契約コストが上がる可能性があります。AIインフラへの投資判断を行う経営層・情シス担当者は、2025〜2026年に固定するインフラ単価の前提が2030年代前半に崩れるシナリオも計画に織り込んでおく必要があります。また、BigQueryやAWS上に経営データ基盤を持つ企業にとっても、クラウドコストの変動リスクは中長期のTCO試算に影響します。
詳細
AIレースが天然ガス需要を倍増させた
AI開発競争の激化を受け、2035年までに米国のデータセンターが消費する天然ガスはドイツと日本を合計した量を超えると試算されています。BloombergNEFの最新レポートによると、データセンターは今後10年間でLNG輸出に次ぐ天然ガス需要の第2位の成長ドライバーになる見通しです。
消費量は**1日約180億立方フィート(18 billion cubic feet per day)**に達すると予測されており、同機関が9か月前に発表した予測のほぼ倍という水準です。新しい予測では、発表済みのデータセンタープロジェクトがすべて完工するわけではないという現実も織り込み済みです。
Meta・Microsoft・Google・Amazonが自家ガス発電を加速
近年注目を集めているのが、電力網(グリッド)を経由せず敷地内で電力を自家生産するデータセンターです。Meta・Microsoft・Google・Amazonはそれぞれ、グリッドをバイパスする新設ガス火力発電所の計画を発表しています。
これらのオンサイト発電プロジェクトは、2035年時点で1日29〜34億立方フィートを消費すると見込まれます。これは現在すべてのデータセンターが消費するガス量(グリッド向け発電分を含む)とほぼ同規模です。
ただし、BloombergNEFによれば、オンサイト発電データセンターの需要増はあくまで全体の一部にとどまります。グリッド接続型データセンターは2035年までに、電力セクター全体でさらに1日150億立方フィートの天然ガス消費を押し上げると予測されています。これは同期間における他のグリッド接続セクター全体の需要増の5倍に相当します。
価格上昇と市場の安定性への懸念
これほどの需要増が現実になれば、天然ガス価格を押し上げる可能性があります。現在のデータセンター建設ブームは、近年維持されてきた安定的なガス価格を前提としています。しかし、エネルギーアナリスト企業Norevaは「それは楽観的すぎる前提かもしれない」と警告しています。データセンターブームとLNG輸出増加の複合的な影響により、価格が急騰するシナリオも十分ありえます。
テック大手の財務体力は価格急騰に耐えられるとしても、公共料金の支払者(utility ratepayers)——一般家庭や中小企業——はその負担を転嫁されるリスクがあります。
気候変動への影響:米GHG排出量の12%相当が追加される
環境面でも深刻な数字が示されています。IEA(国際エネルギー機関)のデータによると、天然ガス1立方フィートの燃焼は採掘・処理・輸送を含めるとCO2換算で60グラムの温室効果ガスを排出します。
データセンターからの追加需要が積み上がると、毎日100万メトリックトンの温室効果ガスが新たに排出される計算になります。これは**現在の米国の温室効果ガス総排出量の約12%**に相当する規模です。AI普及がエネルギー・環境コストの両面でどれほど急速に影響を拡大しているか、この数字は端的に示しています。