記事のサマリー(TL;DR)
- 2025年ノーベル経済学賞のフィリップ・アギオン教授ほか世界トップ級の経済学者がGoogleのAI&Economy研究プログラムに参加
- McKinsey Global Institute出身のアヌ・マドガフカル氏とウォートン校のダニエル・ロック教授が研究ディレクターに就任、実証研究を主導
- 研究テーマは「雇用の未来」「生産性・成長」「グローバルなAI普及」「科学的発見へのAI影響」の4領域
国内の生成AI活用・労働政策を担う企業・機関が注目すべき実証データの活用
GoogleのAI&Economy研究プログラムは、単なる利用実態の追跡にとどまらず、企業生産性・労働市場・中小企業エコシステムへの影響を定量化する実証研究へと発展しています。同チームが公開している「ATLAS v1.0」はオープンアクセスのインタラクティブデータサイトとして提供されており、日本企業の経営層や情報システム担当者が生成AI投資の根拠データとして参照できる状態にあります。
国内では、政府の「AI戦略2025」に代表されるように、AIの生産性効果を定量的に示すエビデンスへの需要が高まっています。今回加わったアヌ・マドガフカル氏がMGI時代に手がけた労働市場の構造転換研究や、ダニエル・ロック教授による「フロンティアモデルのテレメトリーと計量経済学を橋渡しする手法」は、kintone・Salesforceといった業務SaaSの導入効果を数値化しようとしている国内の情シス・経営企画部門にとっても参照価値があります。ATLASの更新データをベースに、自社の生成AI導入ロードマップの費用対効果を社内で説明する際の外部根拠として機能します。
詳細
AI&Economy研究プログラムの背景
GoogleはATLAS v1.0とそのインタラクティブサイトを立ち上げ、職場・日常生活における自社AIツールの利用実態の把握に取り組んできました。しかし利用パターンの追跡はあくまで出発点です。AIが雇用・ビジネス・日常生活を再編していくなかで、その変化を読み解くには、きめ細かなデータと厳密な経済学的探究を統合した学際的なアプローチが必要とされています。
同プログラムが重点を置く4つの研究領域は以下のとおりです。
- 雇用の未来(Future of Work)
- 生産性と成長(Productivity and Growth)
- グローバルなテクノロジー普及(Global Technology Diffusion)
- 科学的発見へのAIの影響(AI’s Impact on Scientific Discovery)
新たに参加するアカデミック・アドバイザーとビジティング・フェロー
フィリップ・アギオン(Philippe Aghion)——アカデミック・アドバイザー
INSEADおよびコレージュ・ド・フランスのKurt Björklundチェアド・プロフェッサーであり、2025年ノーベル経済学賞受賞者。イノベーション主導型成長と「創造的破壊」に関する先駆的研究で知られる同氏は、ノーベル賞受賞者のマイケル・スペンス氏、ケンブリッジ大学のダイアン・コイル卿とともに諮問グループに加わり、AIの長期的なマクロ経済的軌道のモデル化に取り組みます。
アジャイ・アグラワル(Ajay Agrawal)——ビジティング・フェロー
トロント大学ロットマン経営大学院のGeoffrey TaberチェアInnovation and Entrepreneurshipおよび戦略的マネジメント教授。AI経済学・ロボティクス・人類の福祉拡大にAIがどう寄与するかを研究します。同じくビジティング・フェローでMIT経済学部長のデービッド・オーター教授と緊密に協働する予定です。
研究ディレクターとして参加する2名
アヌ・マドガフカル(Anu Madgavkar)
McKinsey Global Institute(MGI)の元パートナー。20年以上にわたり、労働市場・テクノロジー導入・構造的経済転換に関するグローバル研究を主導してきました。世界経済フォーラム(WEF)や国連にも定期的に寄稿しており、各国政府・多国間機関・企業リーダーへの助言実績を持ちます。Googleでは、グローバルなAI普及、中小企業エコシステム、生成AIが雇用に与える影響に関する実証研究をリードします。
ダニエル・ロック(Daniel Rock)
ペンシルバニア大学ウォートン校からの参加。AI・労働をテーマとする実証経済学の第一人者であり、技術的転換に関する基礎的論文を共同執筆しています。AI2050 Early Career FellowかつMIT Digital Fellowとして知られ、フロンティアモデルのテレメトリーと厳密な計量経済学を橋渡しし、企業生産性・労働再編・科学的発見を分析する実証研究を主導します。
両ディレクターは、Google DeepMindのAGI Economics担当ディレクターであるアレックス・イマス氏と、GoogleのChief Economist’s OfficeでAI&Economy Leadを務めるザンナ・イスチェンコ氏とともに研究プログラムを率いる体制です。
今後の研究方針
拡充されたチームは「科学的な橋渡し役」として機能し、今後のATLAS更新や実証研究に直接貢献します。組織のベストプラクティス、公共政策フレームワーク、およびAIによるワーカーのスキルアップ・専門知識の民主化・広範な繁栄の実現に必要なトレーニングプログラムの特定に注力するとしています。
最新の研究論文やグローバルデータは ai.google/economy で公開されています。