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2026.06.23

AIチップメーカー Groq が6億5,000万ドル調達——Nvidia の20億ドル「not-acqui-hire」後の再起戦略

記事のサマリー(TL;DR)

  • Groq が6億5,000万ドルの資金調達を確認。前回2024年9月時点の評価額は69億ドル
  • Nvidia が LPU の IP ライセンスを取得し創業者 Jonathan Ross らを引き抜いた約6か月後の発表
  • 新 CEO の Doug Wightman のもと、推論クラウド(ネオクラウド)事業へピボットし、500万人以上の開発者にサービス提供中

国内 AI 推論クラウド・GPU クラウド利用企業が注目すべき構図

Groq のネオクラウドは北米・欧州・中東・APAC に13拠点を展開しており、日本を含むアジア太平洋地域もカバーする。国内でも LLM 推論の低レイテンシ・大スループットへの需要は急拡大しており、Groq のクラウド API はすでに複数のスタートアップや AI ソリューション企業が評価・採用している。今回の資金調達によって運用安定性と拡張投資の裏付けが得られた形で、「Nvidia 傘下の CUDA エコシステム一択」から脱した代替推論基盤の選択肢として改めて評価されやすくなった。一方、LPU の IP は Nvidia に移転しているため、Groq がハードウェアの差別化を失った状況でどこまでコスト・スループット競争力を維持できるかは、国内導入を検討する際に確認すべき論点となる。Scale AI が Meta の14.3億ドル not-acqui-hire 後に10億ドル収益軌道に乗ったとされる事例は、同様の構図からの回復可能性を示す参考事例として読める。

詳細

Nvidia の「not-acqui-hire」とは何だったのか

2024年12月、Nvidia は Groq との間で非独占的な技術ライセンス契約を締結した。表向きはライセンス料の支払いだが、実態は Groq の創業者兼 CEO Jonathan Ross、社長 Sunny Madra、そのほかの主要社員を Nvidia が採用する代わりに投資家へ多額のリターンを還元する構造だった。このような「名目はライセンス、実質は人材獲得」の取引は業界内で “not-acqui-hire”(非買収型人材獲得)と呼ばれる。

Jonathan Ross は元 Google のエンジニアで、Google の AI チップ「Tensor Processing Unit(TPU)」の開発に関わった人物として知られる。約10年前、同じく Google 出身の Doug Wightman と共同で Groq を設立した。Nvidia との取引後、Wightman は残留して CEO に就任している。

Groq が開発した LPU と Nvidia への IP 移転

Groq は推論に特化したチップ「Language Processing Unit(LPU)」を開発し、クラウドサービスおよびオンプレミスのハードウェアクラスターとして販売してきた。Nvidia が LPU の IP を取得した後、2025年3月の GTC イベントで「Nvidia Groq 3 LPX 推論ハードウェアシステム」として自社製品を発表している。

ネオクラウド事業へのピボット

Groq は今後の中核事業として推論クラウド(ネオクラウド)に軸足を移した。この事業はもともと Sunny Madra が率いており、Groq が2024年に Madra の AI データ分析企業 Definitive Intelligence を買収したことで強化されていた。

現在の規模は以下のとおり:

  • 北米・欧州・中東・APAC にわたる13か所のデータセンター
  • 500万人以上の開発者および数千社の AI 企業にサービス提供
  • 週あたり数兆トークンを処理

経営体制の刷新

主要幹部が Nvidia に移ったことで、Groq は経営陣を再整備した。

  • Alan Rice(COO):xAI・Meta での勤務経験を持ち、米海軍でのキャリアも有する
  • Sinclair Schuller(CTO):エンタープライズクラウドソフトウェア企業 Apprenda の創業者
  • Rakesh Malhotra(CPO):Schuller と共同で Nuvalence(2024年に EY が買収したソフトウェアエンジニアリング会社)を創業。Microsoft のクラウド製品開発に約10年携わった経歴を持つ

推論クラウド市場の競合環境と今後の展望

今回の $650M 調達の新評価額は非開示。前回2024年9月の $750M ラウンド時の評価額は69億ドルだった。

推論関連技術は現在、VC 投資が集中し需要が急拡大している分野だが、競合の参入も活発だ。Groq にとって最大の課題は、差別化の源泉だった LPU の IP を Nvidia と共有する状況でいかにコスト・レイテンシ競争力を維持するかにある。

比較事例として、Scale AI は Meta による14.3億ドルの not-acqui-hire から約1年後に事業が回復し、CEO の Jason Droege が Forbes に対して10億ドル収益軌道にあることを語っている。同様の構図を乗り越えた先例として、Groq の再起を評価する上での参考になる。