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2026.06.10

Anthropic が Claude Fable 5 を一般公開——Mythos モデルの初の公開版、セキュリティ制限と30日データ保持義務付き

記事のサマリー(TL;DR)

  • Anthropic が Mythos モデルの公開版 Claude Fable 5 を API・消費型 Enterprise プランで提供開始(2025年6月)
  • 入力 $10 /百万トークン・出力 $50 /百万トークンと Opus 4.8 の2倍の価格。セキュリティ・生物・化学など高リスク領域はOpus 4.8 にフォールバック
  • 全トラフィックへの 30日間データ保持を義務化(従来ゼロ保持契約の企業にも適用)

日本の API 利用企業・Shopify Plus 事業者が確認すべきデータ保持ポリシーの変更

Fable 5 および Mythos 5 のリリースに伴い、Anthropic は既存のゼロ保持(zero-retention)契約を結んでいる企業に対しても、全トラフィックの 30日間保持を義務付けると発表しました。日本では個人情報保護法(改正 APPI)の観点から、顧客データを含むプロンプトをAPIに送信する構成を採っているシステムが多く、この保持ポリシーの変更はデータガバナンス上の見直しを迫る可能性があります。Anthropic はこのデータをトレーニングには使用せず、ジェイルブレイクなど新型攻撃への防御と誤検知低減のみに用いるとしていますが、社内規定・契約条項の再確認が必要です。また、6月22日までは Pro・Max・Team・座席型 Enterprise プランに追加費用なしで含まれる一方、6月23日以降は利用クレジット方式に移行するため、コスト試算の更新も急務です。kintone・Salesforce・freee などのバックオフィス SaaS と Claude を連携させている構成では、送信データのスコープを改めて洗い出し、30日保持に問題がないか法務・情報セキュリティ部門と確認しておくことが現実的な対応です。

詳細

Claude Fable 5 とは何か

Anthropic は2025年6月、Mythos モデルの初の一般向けバージョンである Claude Fable 5 を発表しました。Anthropic API および消費ベースの Enterprise プランを通じて、誰でもアクセスできます。Mythos 自体は2025年4月にプレビュー公開されたものの、サイバーセキュリティ上の懸念から当初は一部パートナー企業のみに限定され、先週には15カ国の数百の組織(主に重要インフラ管理組織)へのアクセスが拡大されました。

Fable 5 はソフトウェアエンジニアリング・ナレッジワーク・ビジョン(画像理解)の領域で高い能力を持つとされていますが、サイバーセキュリティ・生物学・化学・蒸留(distillation)などの高リスク分野においては応答をブロックし、Opus 4.8 にフォールバックする仕組みを持っています。

アクセスと価格のスケジュール

サブスクリプションでのアクセスは段階的に展開されます。

  • 〜6月22日: Pro・Max・Team・座席型 Enterprise プランに追加費用なしで含まれる
  • 6月23日〜: 上記プランから除外され、利用クレジット方式に移行(可能な限り早期に標準サブスクリプション機能として再提供予定)

価格は 入力 $10 /百万トークン、出力 $50 /百万トークンで、Opus 4.8 の2倍に相当します。Anthropic は Fable 5 の需要が非常に高く、予測が困難であると述べています。

なお、Mythos にアクセスが承認済みの組織向けには、Mythos 5 の新バージョンも同時にデプロイされています。Fable 5・Mythos 5 ともに同一価格設定です。

安全性テストとジェイルブレーク対策

Anthropic は、Fable 5 のリリース前に1,000時間超の内部バグバウンティを実施し、「ユニバーサルジェイルブレーク(万能突破手法)」は発見されなかったと報告しています。外部のレッドチーミング組織も同様にユニバーサルジェイルブレークの発見には至らなかったとのことです。

ただし、新型の攻撃手法が今後発見される可能性は残るとして、Anthropic は全トラフィックの 30日間データ保持 を義務化しています。この措置は、従来ゼロ保持契約を結んでいた企業にも適用されます。保持データはモデルのトレーニングには用いず、「複雑・新型の攻撃への防御」と「誤検知の特定・削減」のみに使用するとしています。この方針は、強力なモデルへのアクセスに必須のデータ保持ポリシーを設けるという業界先例になる可能性があります。

実測パフォーマンス:サードパーティ評価

複数のパートナー企業が Fable 5 の評価結果を公開しています。

  • Hex(アナリティクス企業): 複雑・長時間の分析タスクを対象とした自社コアベンチマークで 90% を初めて達成。「最難問においても高い判断力とニュアンスへの注意を示した」と評価
  • Base44(バイブコーディングプラットフォーム): アプリのワンショット生成とツール呼び出しに優れていると報告
  • Genspark(AI エージェントプラットフォーム): 自社評価で他の全モデルを上回り、UI デザインやゲームコーディングで顕著な改善を確認
  • Rakuten(楽天、ショッピング報酬プラットフォーム): 「最高努力レベルでは Fable が自身の成果物を振り返り検証する。高度な自律運用を可能にするのがこの点であり、追加の思考コストは十分に元が取れる」と述べています

また、早期データによれば、Fable がフォールバックなしに自身の応答のみで完了したセッションは 95% 以上 に達しているとのことです。

IPO に向けた動きと AI 開発への警鐘

Fable のリリースは、Anthropic が OpenAI や Elon Musk の SpaceX と並んで株式上場の準備を進める中でのものです。Anthropic はその一方で、主要なグローバル AI ラボに対し、フロンティア AI 開発の「協調的ブレーキ」確立を訴える声明も発表しています。Anthropic は、AI システムの進歩が急速であるため、再帰的自己改善(RSI: Recursive Self-Improvement)、すなわち人間の介入なしにモデルが自律的に自己改善するフェーズに近づきつつあると警告しています。

コスト面については、多くの企業が AI コストの増大に直面しており、Opus 4.8 のような高度なモデルは単一リクエストを複数タスクに分割する高度な推論によってコストをさらに押し上げる可能性があります。Fable 5 の価格設定は、広範な普及を抑制する要因になりえます。