記事のサマリー(TL;DR)
- BloombergNEFがデータセンターの米国電力消費を2035年に発電量の**20%(現在の4倍)**と予測
- PJM電力網では過去1年で電力価格が76%上昇し、接続申請の混雑が深刻化
- 世界全体では2033年に**1,935テラワット時(TWh)**の新規需要が生まれる見通し
国内データセンター事業者・クラウド活用企業が直視すべき電力コストリスク
この予測は米国市場を中心としたものですが、日本企業にとっても無関係ではありません。AWS・Google Cloud・Microsoft Azureといった主要クラウドプロバイダーは、米国内データセンターのコスト構造が悪化すれば、グローバルな料金体系への転嫁や、日本リージョンへの投資優先度の見直しを迫られる可能性があります。特に電力価格が過去1年で76%上昇したPJMエリア(バージニア州を含む)は、多くのクラウドリージョンが集中する地域です。
また、生成AIの学習・推論用インフラへの需要が世界規模で急騰しており、GPU・HBMなど電力集約型ハードウェアの調達コストや稼働コストも高止まりが続く見通しです。BigQueryやVertex AIをデータ分析基盤として活用している企業や、大規模な推論APIを日常的に呼び出す企業は、中長期のクラウド費用設計において電力・インフラコスト上昇のシナリオを織り込んでおく必要があります。
詳細
データセンターの電力消費、2035年に米国発電量の20%へ
BloombergNEF(ブルームバーグNEF)の新報告書によると、データセンターは2035年までに米国内で生産される電力の5分の1を消費する見通しです。これは現在の4倍に相当し、AIコンピューティングの急拡大がデータセンター容量を今後10年で**約200ギガワット(GW)**近くまで押し上げると予測されています。
その容量のほぼ半分がAIの学習(トレーニング)と推論(インファレンス)に充てられ、その大部分は引き続き米国に集中します。2033年時点では、AIチップの電力需要の**64%**を米国が占める見込みです。
上方修正が相次ぐ電力需要予測
今回BloombergNEFが示した2035年の電力需要見通しは、同社が2024年12月に公表した予測から83%高い数値です。他の機関も予測を大幅に引き上げており、電力業界の非営利団体EPRIは2024年時点の推計を2倍以上に修正。S&Pの予測も、2024年10月から2025年4月の間に3分の1超引き上げられました。
これらの修正は、米国全土で加速するデータセンター建設のペースを反映しています。
既存電力網への負荷:PJMとERCOTの事例
BloombergNEFは今後10年で、新設データセンターの大多数がすでに逼迫した電力網に接続を求めると予測しています。
- PJM Interconnection(バージニア州〜イリノイ州をカバー)では、電力の**34%**がデータセンター向けになる見通し
- ERCOT(テキサス州の大部分をカバー)では、発電容量の**22%**をデータセンターに割り当てる必要が生じる見込み
PJMはすでに多数のデータセンターを抱えており、大型発電所・大口需要家双方からの接続申請対応に苦慮しています。同組織は新規電源の接続申請を4年間停止していた経緯があり、需要が増加し続ける中で供給不足リスクにさらされています。
2025年4月に新規電源向けの申請受付を再開したものの、事態は深刻さを増しており、大手電力会社**American Electric Power(AEP)**がPJMからの脱退を示唆する事態にまで発展しています。
電力の需給不均衡は電力価格を過去1年で76%押し上げました。それでもデータセンター事業者のPJMへの接続意欲は衰えず、同電力網の最新容量オークションにおける落札の**38%**をデータセンターが占めています。
グローバルな電力需要への波及
米国がAIコンピューティングの主要拠点であり続ける一方、データセンターは世界各地でも拡大を続けています。AIの普及が積極的なシナリオ通りに進んだ場合、2033年までにデータセンターは世界全体で**1,935テラワット時(TWh)**の新規電力需要を生み出す計算になります。これはインドが年間に消費する電力量とほぼ同規模です。