記事のサマリー(TL;DR)
- AnthropicとDXC Technologyが多年間グローバル提携を発表。数万人のClaude認定エンジニアを育成し、規制業種の基幹システムへClaudeを展開
- DXCは新AIネイティブプラットフォーム「DXC OASIS」のコード95%以上をClaudeで生成し、開発速度を10倍に向上。すでに50社以上が利用中
- 保険・レガシーモダナイゼーション・サイバーセキュリティ・アプリケーション運用の4領域から展開開始。DXCはClaude Partner Networkにも参加
国内の銀行・保険・製造業SaaSを運用する情報システム部門が注目すべき点
DXCは日本を含む70カ国・約11万5,000人規模のIT企業であり、国内メガバンクや損害保険会社、大手製造業の基幹インフラを受託運用する実績を持ちます。今回の提携では、DXCが自社の厳格なセキュリティ・コンプライアンス要件のもとで先にClaudeを内部検証してから顧客環境へ展開するという手順を踏んでいる点が重要です。
日本の金融機関や保険会社はシステムの安定稼働・規制対応を優先するため、生成AIの業務利用は「PoC止まり」になりがちでした。しかしDXCのアプローチのように「ITサービスプロバイダー自身がまず自社業務でAIを運用し、品質・安全性を証明した上で顧客に提供する」モデルは、社内承認を得やすい導入パスとして国内でも参考になります。また、コードの95%以上をClaudeが生成しエンジニアがレビューする開発体制は、レガシーCOBOLや独自フレームワークの刷新を検討している金融・製造業の情シス部門にとって、モダナイゼーションコスト試算の前提を大きく変えうる実績値です。
kintone・Salesforceなど業務SaaSを複数横断するシステム構成を持つ企業でも、Claude APIをオーケストレーション層に置いてエージェントワークフローを構成する設計は、OASIS的な発想と方向性が重なります。
詳細
DXC TechnologyとAnthropicがグローバル多年間提携を締結
Anthropicは、世界最大級のITサービス企業の一つであるDXC Technology(DXCテクノロジー)との多年間グローバル提携を発表しました。DXCは数万人規模のClaude認定フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)を育成します。FDEとは顧客組織に直接常駐するエンジニアのことで、世界最大級の銀行・航空会社・保険会社・製造業・政府機関が依拠するシステムにClaudeを組み込む役割を担います。
これらのシステムはDXCが数十年にわたって運用してきたもので、取引処理・保険金請求・業務オペレーションなど事業の根幹を支えており、厳格なセキュリティ・コンプライアンス要件のもとで稼働しています。DXCは顧客企業への展開に先立ち、70カ国・約11万5,000人の自社従業員が使う内部システムでClaudeを検証しました。その中には新しいAIネイティブ・オーケストレーションプラットフォーム「DXC OASIS」の開発も含まれており、コードの95%以上がClaudeによって生成されています。
なお、DXCはAnthropicのパートナーネットワーク「Claude Partner Network」にも加わりました。このネットワークはコンサルティング・サービス企業がエンタープライズ顧客向けにClaudeを提供するための枠組みです。
DXC自社オペレーションへのClaude導入
DXCはクライアントへの展開前に、自社のシステムでClaudeを活用してきました。2026年4月にローンチした「DXC OASIS」は、顧客のITシステムを運用するプラットフォームで、AIエージェントがルーティン業務の大半を担います。ClaudeはOASISのエージェントワークフローを動かすデフォルトのファウンデーションモデルとなっています。
さらに、OASISの開発工程自体でもClaudeが主要ツールとして活用されました。DXCの試算によれば、Claudeの導入によってソフトウェア開発速度が10倍に向上。コードの95%以上をClaudeが生成し、その後ソフトウェアエンジニアがレビューするというフローで開発が進められました。現在OASISはDXC顧客50社以上にサービス提供しており、今後世界規模での展開が計画されています。
「DXCは世界最大級の銀行、航空会社、保険会社、政府機関が新技術を活用できるよう支援してきました。顧客が直面するのと同じセキュリティ・コンプライアンス要件のもとで、自社オペレーション内でClaudeを先に実証した。これからはそのエンジニア自身とともに、業界ごとにClaudeを顧客環境へ届けていきます」(Anthropic 最高商務責任者 ポール・スミス)
Claude認定エンジニアチームの構築
FDEプログラムでは、DXCが既存の開発チームからエンジニアを選抜し、Anthropicのトレーニング・認定プログラム「Anthropic Academy」を通じて認定を付与します。DXCはAnthropicアカデミーのカリキュラムに加え、顧客が運用するミッションクリティカルなシステムに特化した独自トレーニングを追加しています。
4つの優先領域
提携はDXCがすでに大規模な顧客オペレーションを持ち、Claudeが即戦力となる以下の4領域から開始します。
保険(Insurance)
Claudeを活用してエージェント型ソリューションを提供し、コアシステムのモダナイゼーションを推進。各顧客のビジネスコンテキスト・運営モデル・戦略的ニーズを考慮した形で展開します。
Modernization as a Service(MaaS)
エンタープライズ顧客のレガシーコードベースを分析・リファクタリング・モダナイゼーションするためにClaudeを活用。従来の手法では困難だったスピードと精度でのモダナイゼーションを実現します。
サイバーセキュリティ(Cybersecurity)
OASISに向けて、「Claude Security」をベースとした常時稼働のセキュリティエンジニア・サブエージェントを開発中。DXCのセキュリティオペレーションセンター(SOC)全体に展開される予定です。
アプリケーションサービス(Application Services)
DXCがエンタープライズ顧客向けに運用するアプリケーション保守・管理環境に、Claudeを直接組み込むOASISエージェントを開発しています。
「DXCとその前身企業は50年以上にわたり、世界を動かすシステムを運用してきました。私たちはこの環境での成果の出し方を熟知しています。Anthropicとのこの提携は、信頼と経験を、利用可能な最高水準のAI技術と結びつけるものです。DXCとこの業界にとって定義的な瞬間です」(DXCテクノロジー 社長兼CEO ラウル・フェルナンデス)