記事のサマリー(TL;DR)
- Gemini API のマネージドエージェントが Gemini 3.6 Flash をデフォルトに切り替え。コード変更不要で自動適用
- 環境フック(hooks)機能追加。
pre_tool_execution/post_tool_executionでツール呼び出しをブロック・審査・整形可能 - 無料枠解放・トークンバジェット上限・cron スケジュールトリガー・Environments API が同時提供
生成 AI × 業務自動化ツールの国内導入を検討するエンジニア・情シスが押さえるべき変更点
Gemini API のマネージドエージェントは、単一 API 呼び出しで「推論・コード実行・パッケージインストール・ファイル管理・Web 取得」を隔離されたクラウドサンドボックス内で一括処理する仕組みです。今回の更新で実務上の導入障壁が大きく下がりました。
無料枠の開放により、請求設定のないプロジェクトでも API キーがあれば即座に検証を始められます。PoC 段階でのコスト懸念を解消できる点は、社内稟議が必要な日本企業にとって特に有効です。
環境フックは、エージェントがサンドボックス内でツールを呼び出す直前・直後に任意のスクリプトを挟める機能です。deny レスポンスを返せばツール呼び出し自体をキャンセルできるため、セキュリティポリシーの強制や監査ログの自動生成が API 側で完結します。kintone や Salesforce 等の業務 SaaS をエージェントに操作させる構成では、この「入口でのゲート処理」が権限制御の要になります。
バジェット上限(max_total_tokens) は複数ターンにわたる自律ループでのコスト暴走を防ぎ、上限到達後も環境状態を保持したまま再開できます。定期バッチ処理には cron スケジュールトリガーを組み合わせることで、外部オーケストレーション基盤なしでも運用サイクルを自動化できます。
詳細
Gemini 3.6 Flash がデフォルトモデルに
antigravity-preview-05-2026 エージェントは、2026年7月28日のアップデートから Gemini 3.6 Flash(gemini-3.6-flash)をデフォルトで使用します。既存コードへの変更は不要で、次回の interaction 呼び出し時から自動的に適用されます。
モデルは agent_config.model パラメータで明示的に上書きも可能です。選択肢は以下の3種類です。
| モデル | 特徴 |
|---|---|
gemini-3.6-flash(デフォルト) |
推論・コーディング・ツール利用のバランス型 |
gemini-3.5-flash |
前世代。汎用エージェントワークフロー向け |
gemini-3.5-flash-lite |
Gemini 3.5 ファミリーで最低レイテンシ・最低コスト |
コスト重視の場合は gemini-3.5-flash-lite を指定します。以下はモデルを明示的に選択するサンプルコードです。
import { GoogleGenAI } from "@google/genai";
const client = new GoogleGenAI({});
const interaction = await client.interactions.create({
agent: "antigravity-preview-05-2026",
input: "package.json の依存関係を監査し、古いパッケージを更新して npm test でビルドを検証してください。",
environment: "remote",
agent_config: {
type: "antigravity",
model: "gemini-3.5-flash-lite",
},
});
console.log(interaction.output_text);
環境フック:ツール呼び出しをブロック・審査・整形する
環境フックは、エージェントがサンドボックス内で実行するツール呼び出しの前後に任意のスクリプトを差し込む機能です。環境に .agents/hooks.json を配置するだけで有効になります。
matcher フィールドは正規表現をサポートしており、code_execution|write_file のように複数ツールをまとめて対象にしたり、* で全ツールを捕捉したりできます。
{
"security-gate": {
"pre_tool_execution": [{
"matcher": "code_execution|write_file",
"hooks": [{"type": "command", "command": "python3 /.agents/hooks-scripts/gate.py", "timeout": 10}]
}]
},
"auto-format": {
"post_tool_execution": [{
"matcher": "*",
"hooks": [{"type": "command", "command": "python3 /.agents/hooks-scripts/auto_lint.py", "timeout": 15}]
}]
}
}
上記の設定では:
- security-gate グループ:
code_executionまたはwrite_fileの実行前にgate.pyを呼び出します。スクリプトが{"decision": "deny", "reason": "..."}を返すとツール呼び出しはスキップされ、拒否理由がモデルのコンテキストに渡されます。 - auto-format グループ:全ツールの実行後に
auto_lint.pyを実行し、コードスタイルを自動整形します。
フックは http タイプのハンドラーもサポートしており、外部エンドポイントへ POST することも可能です。
実用事例:Offdeal の画像検証パイプライン
AI ネイティブの投資銀行 Offdeal は、post_tool_execution フックを使ってリモートサンドボックス内で企業ロゴの自動検証パイプラインを構築しています。エージェントが企業リストを書き出した瞬間にフックが起動し、ロゴ候補の取得・ピクセルレベルの品質チェック・Gemini Vision による検証・承認済みファイルのマニフェスト公開を自動実行します。1枚のデッキに30枚以上のロゴが必要なバンカー向け資料作成を、人手介入なしで品質担保しています。
コスト制御と自動化機能
無料枠の提供
マネージドエージェントが無料枠プロジェクトから利用可能になりました。請求を有効化していないプロジェクトの API キーでエージェントワークフローの検証を始められます。
バジェット上限(Budget Controls)
複数ターンの自律ループは大量のトークンを消費する場合があります。agent_config 内の max_total_tokens に上限値を設定すると、その値(入力+出力+思考トークンの合計)に達した時点でエージェントの実行が安全に一時停止し、status: "incomplete" が返されます。環境の状態は保持されるため、previous_interaction_id と新しいバジェットを指定して再開できます。
const interaction = await client.interactions.create({
agent: "antigravity-preview-05-2026",
input: "このリポジトリの全モジュールを監査してマイグレーションレポートを生成してください。",
agent_config: {
type: "antigravity",
max_total_tokens: 10000,
},
environment: "remote",
});
スケジュールトリガー(Scheduled Triggers)
cron スケジュールを使った定期実行トリガーを設定できます。トリガーはエージェント・環境・プロンプト・スケジュールをひとつのリソースとして永続化し、手動操作なしで起動します。各実行は同じサンドボックスを再利用するため、ファイルは実行をまたいで保持されます。
Environments API
Environments API を使うと、サンドボックスセッションの一覧取得・検査・削除をコードから操作できます。切断後の環境 ID の復元や、パイプライン終了時の 7 日間 TTL を待たない即時クリーンアップが可能です。
導入方法
TypeScript/JavaScript SDK は @google/genai パッケージで利用できます。Python や cURL での実装は Antigravity エージェントのドキュメントを参照してください。AI コーディングアシスタントを使用している場合は、以下のコマンドで Interactions API スキルを追加できます。
npx skills add google-gemini/gemini-skills --skill gemini-interactions-api
詳細は Gemini Interactions API の概要 とマネージドエージェントのクイックスタートを参照してください。