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2026.08.21

LFM2.5-DSpark が最大3.2倍の推論高速化を実現——H100からMacBookまで対応

記事のサマリー(TL;DR)

  • Liquid AIがLFM2.5-1.2B/2.6B/8B-A1B向けDSparkドラフトモデルを公開。H100で最大3.18倍、M4 Max MacBookで最大2.87倍のスループット向上
  • 出力品質は変わらず:グリーディデコード下でターゲットモデルと完全同一の出力を保証するため、ベンチマーク精度(pass@1 / exact match)は不変
  • llama.cpp(PR#27383)とSGLang(PR#31041)に初日からオープンソース対応。Safetensors・GGUFの両形式でHugging Faceから取得可能

生成AIオンデバイス推論・エージェント活用を検討する開発者が押さえるべきポイント

Liquid AIが今回リリースしたDSparkドラフトモデルは、サーバーGPU(H100)だけでなく、M4 Max MacBook ProというコンシューマーデバイスでもLFM2.5-2.6Bが約140 tok/s前後を達成するという点が実務上の意味を持ちます。多くのクラウドプロプライエタリAPIが提供するスループットと同等以上の速度をエッジで実現できることは、ネットワーク遅延が問題になるエージェント型ユースケースや、データをクラウドに送りたくない業務用途(社内文書処理・ローカルファンクションコールなど)での選択肢を広げます。国内では、kintoneやSalesforce・freeeなどの業務SaaSと連携するAIエージェントを構築する際、API呼び出しのレイテンシがユーザー体験の決定要因になるケースが多く、ファンクションコール遅延を平均57%削減できるという数値は直接的な効果として現れます。また、llama.cppへのDay-1対応はオープンソースの推論スタックを社内で運用している開発チームにとって採用障壁を下げます。

詳細

DSpark の仕組み

LLM推論のデコードフェーズは従来、メモリバウンドな処理です。レイテンシのほとんどはDRAMからSRAMへの重みのストリーミングに起因し、計算量自体は主なボトルネックではありません。

Speculative Decoding(投機的デコーディング)はこの課題に対処するアプローチで、軽量なドラフトモデルが候補トークンを生成し、ターゲットモデルが1回のフォワードパスでそれらをまとめて検証します。重みロードのコストを複数トークンで分担することで、実効スループットを大幅に高めます。

DSpark は既存手法の中でも最新のアプローチで、3つのコンポーネントを組み合わせています。

  1. DFlashスタイルの並列バックボーン:ターゲットモデルのコンテキスト特徴を条件として、全ドラフトトークンの隠れ状態を1回のフォワードパスで生成
  2. 軽量シーケンシャルヘッド(Markovチェーン):隣接トークン間のトークン間依存関係を追加し、後方ポジションでの受理率を向上
  3. 信頼度スケジュール付きベリファイア:各トークンの生存確率を予測し、検証コストが節約分を上回る低信頼度のサフィックスを枝刈り

学習とアーキテクチャ

DSpark レシピに従い、SFT・チャット・コード・ファンクションコールデータをカバーするより大規模かつ多様なデータミックスで学習を実施しています。アブレーション実験に基づき、初版のドラフトモデルはAttentionのみの簡略化した構成(5レイヤー、ブロックサイズ9)を採用しています。各ドラフトモデルはデータセット全体で15エポック学習し、損失最小ではなく受理率最大のエポックを選択しています。

結果として生成されたドラフトモデルは約300Mパラメータと比較的小型です。

コンポーネント LFM2.5-1.2B-Instruct LFM2.5-8B-A1B LFM2.5-2.6B
デコーダースタック(5層) 241.2M 241.2M 241.2M
隠れ状態プロジェクション 21.0M 21.0M 21.0M
Markovヘッド 33.6M 65.5M 65.5M
ノルム + 信頼度ヘッド 27.5k 27.5k 27.5k
合計 295.7M 327.7M 327.7M

品質の同一性保証

グリーディデコード下では、ドラフトトークンはターゲットモデルの分布と一致する場合のみ受理されます。棄却された場合はターゲットモデル自身のトークンが代わりに使用されます。出力シーケンスは設計上、ベースラインのグリーディと完全に同一であるため、ベンチマーク精度(pass@1 または exact match)は変わりません。

CPU・GPU での推論速度向上

DSparkドラフトモデルはllama.cpp(Metal実験カーネルで動作する公式コードベース上に実装)とSGLang(DSpark の公式SGLang実装上に構築)へのDay-1サポートと共にリリースされています。

測定条件

  • オンデバイス:llama.cpp + Metal、M4 Max MacBook Pro、FP16 GGUFウェイト、最大256出力トークン
  • GPU:SGLang、H100 80GB × 1枚、BF16
  • 共通設定:DSparkブロックサイズ9、バッチサイズ1、温度0

LFM2.5-2.6B の速度向上

データセット 受理数(10中) H100 高速化 M4 Max 高速化
MATH500 5.42 3.06x(326→1000 tok/s) 2.25x(61→137 tok/s)
HumanEval 4.54 2.56x(326→835 tok/s) 2.63x(61→161 tok/s)
MBPP 4.71 2.64x(326→861 tok/s) 2.11x(62→132 tok/s)
GSM8K 4.32 2.22x(312→693 tok/s) 2.36x(60→143 tok/s)
MT-Bench 5.07 2.87x(325→933 tok/s) 1.99x(62→123 tok/s)
平均 4.81 2.67x(323→864 tok/s) 2.27x(61→139 tok/s)

複数ツールを使うマルチツールシナリオ全体で、DSpark は LFM2.5-2.6B のレイテンシを平均57%削減しています。

LFM2.5-1.2B-Instruct の速度向上

データセット 受理数(10中) H100 高速化 M4 Max 高速化
MATH500 6.02 2.56x(668→1712 tok/s) 2.62x(140→366 tok/s)
HumanEval 5.31 2.26x(664→1499 tok/s) 2.87x(136→389 tok/s)
MBPP 5.52 2.37x(667→1578 tok/s) 2.74x(137→375 tok/s)
GSM8K 4.34 1.67x(624→1041 tok/s) 2.73x(140→381 tok/s)
MT-Bench 3.90 1.66x(657→1091 tok/s) 1.72x(137→237 tok/s)
平均 5.02 2.10x(656→1384 tok/s) 2.54x(138→350 tok/s)

LFM2.5-1.2B-Instruct はデータセットによって受理率のばらつきが大きく、テキスト分布の違いによって速度向上幅が最大52%変動します。

LFM2.5-8B-A1B の速度向上

データセット 受理数(10中) H100 高速化 M4 Max 高速化
MATH500 8.27 3.18x(428→1362 tok/s) 1.21x(93→112 tok/s)
HumanEval 7.02 2.58x(426→1100 tok/s) 1.12x(91→101 tok/s)
MBPP 6.93 2.64x(426→1122 tok/s) 1.09x(89→97 tok/s)
GSM8K 4.02 1.29x(385→496 tok/s) 1.44x(90→129 tok/s)
MT-Bench 8.52 3.02x(426→1288 tok/s) 1.04x(87→90 tok/s)
平均 6.95 2.54x(418→1074 tok/s) 1.18x(90→106 tok/s)

LFM2.5-8B-A1B は受理率こそ高いものの、オンデバイスでは平均18%の改善にとどまっています。これはllama.cppのMetalバックエンドにおける現行のMoE実装の制約と、k個のトークンを検証する際により多くのエキスパートが活性化され、シングルデコードステップよりも多くの重みトラフィックが発生するためです。

LFM2.5-DSpark の使い方

SGLang での実行

DSParkサポートが含まれたSGLangビルド(PR#31041)が必要です。以下のコマンドでターゲットモデルにドラフトモデルをアタッチして起動します。

python -m sglang.launch_server \
  --model-path LiquidAI/LFM2.5-2.6B \
  --speculative-algorithm DSPARK \
  --speculative-draft-model-path LiquidAI/LFM2.5-2.6B-DSpark \
  --speculative-draft-attention-backend flashinfer \
  --disable-radix-cache --mem-fraction-static 0.75 --port 30000

起動後、http://localhost:30000/v1 のOpenAI互換エンドポイントにクエリを投げます。ブロックサイズはドラフトの config.json から読み込まれます。ベースラインは --speculative-* フラグ3つを除いた同コマンドです。

llama.cpp での実行

llama.cppの対応ビルド(PR#27383)が必要です。

llama-server -m LFM2.5-2.6B-F16.gguf \
  -md LFM2.5-2.6B-DSpark-F16.gguf \
  --spec-type draft-dspark --spec-draft-n-max 10 --spec-draft-n-min 0 \
  -fa on -ngl 99

ブロックサイズはサイドカーメタデータから読み込まれます(n-max がそれでクランプされます)。投機的デコーディングは厳密(exact)です。ターゲットが提案された全トークンを検証するため、グリーディ出力はターゲット単独と同一になります。

モデルの入手先

DSparkドラフトモデルのチェックポイントはHugging Face上でSafetensorsおよびGGUF形式で公開されています。

Safetensors形式

  • LFM2.5-2.6B-DSpark
  • LFM2.5-1.2B-Instruct-DSpark
  • LFM2.5-8B-A1B-DSpark

GGUF形式

  • LFM2.5-2.6B-DSpark-GGUF
  • LFM2.5-1.2B-Instruct-DSpark-GGUF
  • LFM2.5-8B-A1B-DSpark-GGUF