記事のサマリー(TL;DR)
- ロードがMad Cool Festival(マドリード)でMeta AIグラスを名指し批判——「セクシーじゃない、買うな」
- EssilorLuxotticaは2025年にRay-Ban Meta AIグラスを700万台超販売、2023〜2024年合計の約3倍超と急成長
- Meta社は複数のプライバシー訴訟・調査に直面中。ケニア人契約労働者への有害動画視聴強要疑惑も浮上
AIグラス普及と日本市場が直視すべきプライバシーリスク
Ray-Ban Meta AIグラスは見た目が普通のサングラスに近く、装着者がカメラで撮影・録画していても周囲からほぼ判別できません。欧米ではすでにハラスメント・恐喝のツールとして悪用された事例が報告されており、規制議論が本格化しています。
日本においても個人情報保護法や各都道府県の迷惑防止条例がどこまでウェアラブルカメラに適用されるかは未整備な部分が多く、2025年に施行・改正された個人情報保護法の実務解釈との整合が課題です。企業側では、社内イベントや商業施設でのAIグラス持ち込みポリシーを明示するルール整備が現実的な対応として議論されはじめています。
EC・小売・ホスピタリティ業界では「スタッフや顧客が知らずに撮影される」リスクが顕在化しており、入館・入場ルールの見直しを検討するタイミングと言えます。
詳細
ロードがステージ上で「AIグラスはセクシーじゃない」と宣言
2026年7月10日(現地時間)、ニュージーランド出身のポップスター・ロードはスペイン・マドリードで開催されたMad Cool Festivalのパフォーマンス中、観客に向けて率直な言葉を投げかけました。
「世の中でますます何が本物かわからなくなってきている。誰かがサングラスをかけているのか、それともあのイカれたAIグラスをかけているのか、見分けられない。はっきり言わせてほしい——グラスはクソ。あれは買うな。セクシーじゃない」
ロードはかつてスマートフォンを海に投げ捨てた経験を著述したこともあり、テクノロジーとの距離感に関して一貫したスタンスを持つアーティストです。今回の発言には文脈的な背景もあります。フェスティバルのスポンサーはRay-Banであり、Ray-BanはMetaと提携してAIグラスを製造・販売しています。さらに、ロードの直後に出演したのはRay-Ban MetaスマートグラスのアンバサダーであるKpopアーティストのJennieでした。
同フェスティバルではKylie JennerがMeta AIグラスの広告塔として活動しており、推進派と批判派の対比が鮮明になった形です。
700万台販売でも消えないプライバシー懸念
ロードの批判はひとつの意見表明にとどまりませんでした。セキュリティ専門家の多くが、AIグラスを「プライバシー上の悪夢(privacy nightmare)」と評価しています。
カメラ内蔵スマートグラスはすでにハラスメントや恐喝の手段として使われた事例が報告されています。Metaは「プライバシーを真剣に受け止めており、録画中に点灯するインジケーターライトなどの安全策を導入している」と説明していますが、同社は現在も複数の調査・訴訟の対象です。
訴訟のひとつでは、ケニア人の契約労働者がAIグラスで撮影されたグラフィックな(暴力・性的な)動画を大量視聴させられ、MetaのAIトレーニングに使用されたと主張されています。Metaはこの具体的な申し立てへの公式見解を明らかにしていません。
2025年:Ray-Ban Meta AIグラスが700万台超を販売
批判や訴訟が続く中でも、販売は好調です。EssilorLuxottica(Ray-Banの製造元)の発表によれば、2025年にRay-Ban MetaのAIグラスは700万台以上を販売。2023〜2024年の合計販売数である約200万台と比べ、3倍超の成長を記録しました。
この好調な販売を背景にMetaはラインナップを継続的に拡充しており、スマートグラスカテゴリにおける同社の存在感はさらに強まっています。
プライバシーへの懸念が購買行動を変えないなら、「見た目のダサさ」が変えるか
TechCrunchはこの状況を次のように総括しています。「プライバシーへの懸念が人々にAIグラスを考え直させないなら、虚栄心(vanity)が変えるかもしれない」——ロードの「セクシーじゃない」という言葉は、その意味で簡潔かつ核心を突いています。
ロードはさらにこう付け加えました。「今、この瞬間こそがセクシー」。テクノロジーへの依存ではなく、現在の体験そのものに価値を見出すメッセージとして、フェスティバルの観客に刺さった言葉でした。