記事のサマリー(TL;DR)
- マサチューセッツ州が25MW超のデータセンターに100%クリーンエネルギー義務化を発令
- テキサス(ERCOT監査)・ニューヨーク(50MW以上の建設停止)に続き、3か月で3州が規制強化
- 親AI系スーパーPAC「Leading the Future」がアンドリーセン・ホロウィッツらの資金で中間選挙向け広告を展開し反論
国内データセンター事業者・クラウドインフラ投資家が注視すべき米国規制の潮流
AIブームに乗じた大規模データセンター建設が米国各州で相次ぐ中、政治的な逆風が急速に強まっています。今回のマサチューセッツ州の行政命令は、単なる環境規制にとどまらず、地域住民・電力料金納付者の保護を正面に掲げている点が特徴的です。州レベルの規制が3か月で3件相次いだことは、米国内でのデータセンター適地選定が従来よりも複雑化していることを示します。
日本でも、AI需要を背景にした大規模データセンターへの国内外企業の投資が急増しており、再生可能エネルギーの調達コストや系統接続問題が立地可否を左右し始めています。PPA(電力購入契約)や自家発電設備の確保が事業計画の前提条件となる局面が、日本市場でも遠くない将来に訪れる可能性を、今回の米国規制動向は示唆しています。インフラ投資の意思決定を行う経営層・情報システム部門にとって、エネルギー調達戦略を立地戦略と一体で検討する必要性が高まっています。
詳細
マサチューセッツ州ヒーリー知事の行政命令の概要
マサチューセッツ州のモーラ・ヒーリー(Maura Healey)知事は、ピーク需要25MW超のデータセンターに対し、クリーンエネルギーを自ら調達することを義務付ける行政命令を発令しました。知事が最も望む形は敷地内(オンサイト)での発電ですが、それが難しい場合は以下のいずれかの対応が求められます。
- 近隣地域における新規発電設備の建設費用を負担する
- 「料金納付者保護基金(ratepayer protection fund)」に拠出する
同州知事室は行政命令の内容を補足し、「データセンターは電力需要の100%をクリーンエネルギーで賄うことが要件となる」と明確化しています。
州法の基準との関係
マサチューセッツ州には、州法で定められたクリーンエネルギー基準(Massachusetts Clean Energy Standard)が存在します。同基準では、風力・太陽光・水力などの承認された発電源からの電力比率を年々引き上げることが義務付けられており、2030年には少なくとも40%の達成が求められています。
今回の行政命令はこの基準を土台としつつも、データセンターに限っては100%のクリーンエネルギー調達という、より厳しい条件を上乗せしています。
関連する措置
- データセンター販売税免除の申請停止:規制当局が新たな制限を実施するための準備期間を確保するため、先月発効したばかりのデータセンター向け販売税免除の申請受付を一時停止。
- 秘密保持契約(NDA)の締結回避を推奨:行政命令では、地域コミュニティに対してNDAへの署名を「避けるよう」指示しており、情報の透明性確保を促しています。
米国3州で相次ぐ規制強化
マサチューセッツ州の規制強化は、わずか3か月で3件目の州レベルの動きです。
- 2026年7月 — ニューヨーク州:50MW以上の新規データセンターの建設を停止。
- 2026年8月 — テキサス州:グレッグ・アボット(Greg Abbott)知事が、すべての新規データセンターに対して公益事業委員会とグリッド運営機関ERCOTによる監査への服従を義務付けると発表。
- 2026年9月 — マサチューセッツ州:本行政命令による100%クリーンエネルギー義務化。
テック業界の反発
公衆の反感が高まる中、テクノロジー業界も反撃に出ています。マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)、ベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)、グレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)らが資金を提供する親AI系スーパーPAC「Leading the Future」は、中間選挙の激戦州を対象に有権者の世論を動かすための広告を展開しています。
かつては誘致合戦の的だったデータセンターが、今や「持ち込み電力」を義務付けられる存在へと立場が逆転しつつあります。エネルギー問題をめぐる政治的対立は、今後の米国データセンター立地戦略に大きな影響を与えることになりそうです。