記事のサマリー(TL;DR)
- Mecka AI が Sequoia Capital 主導で評価額約5億ドルの新ラウンドを交渉中。前回(Framework Ventures 主導・6,000万ドル調達)からわずか3か月での追加調達
- 同社は人々にスマートフォンや身体センサーを使って日常動作を録画させる「エゴセントリック」アプローチで、ヒューマノイドを含む汎用ロボット向け学習データを生成
- 2026年末の年間ランレート(ARR)を1億ドルと予測。競合 XDOF は評価額12億ドルに迫る新ラウンドを進行中とされ、業界全体でデータ争奪戦が本格化
国内ロボティクス・AI 開発企業が注目すべきロボット訓練データ市場の動向
ロボット訓練データのスタートアップが短期間で評価額を急伸させている背景には、汎用ロボット(特にヒューマノイド)の学習に必要な「リアルワールドデータ」が深刻に不足しているという構造的課題があります。LLM(大規模言語モデル)向けにはScale AIやMercorなどの人力データ企業が確立されてきましたが、物理世界での動作データは収集コストが高く、体系的なプラットフォームが未成熟です。
日本国内でも製造・物流・医療分野でのロボット導入が加速していますが、モデルの汎化性能を高めるためには多様な動作データが不可欠です。Mecka AI のようなエゴセントリック型データ収集サービスが国際的に拡大すれば、国内ロボティクス企業や AI ラボが外部データプラットフォームを活用してモデル開発コストを削減できる選択肢が増えます。また、日本では医療・介護向けロボット開発への公的支援が拡充されており、こうしたデータ収集サービスとの連携が今後の研究開発スピードに直結する可能性があります。
詳細
Mecka AI とは何か
Mecka AI は、ヒューマノイドロボットやその他のロボティクスを訓練するための人間の動作データを収集・分析するスタートアップです。2024年に4人の共同創業者によって設立されました。カナダ人の Josh Gao と Mogen Cheng はかつてレストラン向けフィンテックスタートアップを構築した経歴を持ち、Jason Chong は自身が立ち上げた暗号資産取引所が Coinbase に買収された後に Coinbase へ参画した人物です。唯一カナダ人以外のメンバーである Duy Nguyen はオペレーション担当です。
4人の共同創業者はロボティクスの専門的バックグラウンドを持ちません。しかし彼らは「物理世界のデータが著しく不足しており、リアルワールドのインタラクションを収集することが汎用ロボット実現の主要なボトルネックだ」という事実に着目しました。
社名の “Mecka” は、人間が操縦する架空の巨大ロボットを意味する「メカ」に由来します。
Scale AI と同じことをロボティクスで
Mecka は、Scale AI・Mercor・Surge といった人力データ企業が LLM に対してやったことを、ロボティクス向けに実現しようとしています。具体的には、一般の人々に報酬を支払い、コーヒーを淹れる・車を修理するといった日常的な作業を身体センサーとスマートフォンで録画させるモデルです。このエゴセントリック(一人称視点)なアプローチは、テレオペレーションなど他の物理データ収集手法と組み合わせて活用されます。
資金調達の経緯と評価額
2026年9月時点で、Mecka AI は Sequoia Capital 主導の新ラウンドにより評価額約5億ドル(≒約750億円)に迫る資金調達を進めていると、事情を知る2名が明かしました。正確なラウンド規模は非公表で、条件はまだ最終確定していません。
前回ラウンドは Framework Ventures 主導で6,000万ドル(≒約90億円)を調達しており、Menlo Ventures・SV Angel・Kindred Ventures も参加。今回のラウンドはその3か月後となります。
2026年6月初め時点で、Gao CEO は Fortune 誌に対し「2026年末には年間ランレート1億ドルに到達する見通し」と語っています。
顧客と競合
Mecka AI は顧客リストを公表していませんが、多くのロボティクス企業や AI ラボがこのエゴセントリック型のデータを採用しています。
競合として注目されるのは XDOF で、TechCrunch は同社が評価額12億ドル(≒約1,800億円)に迫る新ラウンドを進めていると報じています。また、LLM 向けから事業を拡張している Scale AI や Micro1 もロボット訓練データ市場に参入しており、競争は多面的に激化しています。