記事のサマリー(TL;DR)
- Nvidiaが45℃冷媒循環方式の温水冷却システムを発表、データセンター施設内の水使用量を最大100%削減可能
- ただし電力生成(天然ガス:1.17L/kWh、石炭:2.2L/kWh)や半導体製造の水消費を含めると、施設外の水使用が総フットプリントの2〜3倍になる
- IEAの試算では2030年まで新規データセンター需要の40%超が天然ガス・石炭由来の電力で賄われる見通しで、電源構成の転換なしに根本解決はない
国内データセンター・AI投資を進める企業が押さえるべき水消費の構造問題
日本でも生成AIインフラへの投資が急拡大しており、国内外のクラウドプロバイダーが大規模データセンターの建設を加速しています。Nvidiaの発表は「施設内」の水消費改善として有効ですが、電力のカーボン・水フットプリントは電源構成に依存します。日本の電源構成は2024年時点でも火力発電の比率が高く、天然ガス火力が主力です。天然ガス発電は1kWhあたり1.17リットルの水を消費するとされており、データセンターの実質的な水フットプリントを評価する際には電力由来の水消費を含めたスコープ3相当の算定が不可欠です。ESG開示規制の強化(ISSB/CSRD対応の国内普及)を踏まえると、調達電力の水消費も含めたLCA(ライフサイクルアセスメント)的な視点でサプライヤー選定・インフラ設計を行うことが、今後のグリーンウォッシュリスク回避につながります。
詳細
Nvidiaが発表した温水冷却システムの仕組み
Nvidiaは、データセンターの水使用量を「ほぼゼロ」に削減できる温水冷却システムを発表しました。同社最高サステナビリティ責任者のJosh Parker氏はAxiosの取材に対し「データセンターにおける水消費の課題は、おおむね解決された」と述べています。
仕組みとしては、冷媒を45℃(113°F)でラックに送り込み、サーバーを通過した後55℃(131°F)で排出するというクローズドループ方式です。設備の生涯を通じて冷媒を一度充填して循環させるため、チップ冷却のために新たな水を消費しません。気候条件が有利な地域では、外気が蒸発冷却や(場合によっては)ファンなしでパッシブ放熱器から熱を吸収できるとしており、施設内の水使用量を最大100%削減できると説明しています。ファンや冷凍機が不要になれば、省エネ・低騒音の効果も生まれます。
「施設内」だけを見ると見えないもの
問題は、Nvidiaの算定方法が「データセンターの壁の内側」に限定されている点です。施設外、主に電力生成と半導体製造における水消費を加えると、施設の水フットプリント全体は2〜3倍に膨らみます。つまりNvidiaのシステムが対処できるのは、AIデータセンターの総水消費量の約4分の1〜3分の1にすぎないと記事は指摘しています。
電力生成における水消費の内訳は以下の通りです。
- 天然ガス火力(Natural gas): 1.17L/kWh
- 石炭火力(Coal): 2.2L/kWh(さらに高水準)
- 水力発電(Hydropower): 貯水池からの蒸発損失で6.8L/kWh。データセンター電力の約10%を供給
- 地熱(Geothermal): 技術によって大きく異なる。スタートアップFervoは「劣化水(degraded water)」の活用を公約
- 風力・太陽光(Wind/Solar): それぞれ0.01L/kWh・0.03L/kWhと極めて少量(製造・洗浄用水含む)
米国地質調査所(U.S. Geological Survey)によれば、米国の化石燃料発電所は1日あたり27億ガロン(約102億リットル)の水を消費しており、その大部分が蒸発冷却に使われています。
電源構成が変わらなければ解決しない
IEA(国際エネルギー機関)のデータでは、現在データセンターに供給される電力の約半分が化石燃料由来です。さらにIEAの予測では、2030年までにデータセンター需要増を賄う新規電力の40%超が天然ガムと石炭で供給される見込みです。
再生可能エネルギーによる新規電力容量は増加しているものの、現在の軌道が大幅に変わらない限り、データセンターはNvidiaが施設内で何を改善しようとも、依然として大量の水を消費し続けることになります。Nvidiaへ本件の見解確認を求めており、回答があり次第記事を更新するとTechCrunchは述べています。