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2026.08.13

OlmoEarth が埋め込みベクトルのエクスポートに対応——衛星画像の類似検索・変化検出をラベルなしで実現

記事のサマリー(TL;DR)

  • Allen AI の OlmoEarth Studio が埋め込みベクトルのエクスポート機能を追加。Nano(128次元)・Tiny(192次元)・Base(768次元)の3バリアントを選択可能
  • ラベル 60件のロジスティック回帰で重み付き F1 0.84 を達成(ベトナム・カマウのマングローブ分類)。ラベル数を30→300に増やしても精度はほぼ変わらず
  • 2023年9月と2024年9月の月次埋め込みを比較するだけで、カリフォルニア州バット郡の 2024年パーク火災焼損域をラベルなしで即時検出

国内の地球観測・農業 DX・インフラ点検事業者が注目すべき活用ポイント

日本では農業リモートセンシングや太陽光パネル・インフラ点検への衛星データ活用が広がっているが、アノテーション工数の高さと専用モデルの学習コストが普及の壁になっている。OlmoEarth の埋め込みは「少数ラベル + 線形分類器」で高精度マップを生成できるため、ラベル付け工数を大幅に削減できる。また、出力が標準的な **Cloud-Optimized GeoTIFF(COG)**形式であるため、QGIS・GDAL・rasterio といった既存の地理情報ツールチェーンにそのまま組み込める点は、国内の GIS 担当者にとっても導入障壁が低い。モデルの重み・ソースコード・論文がすべて公開されているオープンソース構成のため、クラウド従量課金を抑えたオンプレミス・エッジ処理の検討も現実的だ。変化検出ユースケースでは月次粒度の時系列解析が可能であり、農地管理や防災目的のモニタリングシステムへの組み込みに適している。

詳細

OlmoEarth Studio の埋め込みエクスポートとは

OlmoEarth Studio(Allen AI が開発する地球観測モデル構築プラットフォーム)が、埋め込みベクトルのカスタム計算・エクスポート機能を正式提供した。埋め込みとは OlmoEarth のオープンソース基盤モデルが生成する「地点ごとの数値ベクトル表現」であり、地表の特性が似た場所は近いベクトル値を、異なる場所は遠いベクトル値を持つ。

モデルの重みとソースコードは研究論文とともに公開されており、埋め込みの生成プロセスをコミュニティが検証できる。エクスポートされる形式は **Cloud-Optimized GeoTIFF(COG)**で、軽量かつ共有しやすい。Studio UI または API から以下のパラメータを指定して実行する。

  • 対象エリア(Area of Interest): ポリゴンを描画またはアップロード
  • 期間(Time span): 1〜12ヶ月単位
  • エンコーダバリアント: Nano(128次元、パラメータ数 140万)、Tiny(192次元、620万)、Base(768次元、8,900万)
  • 空間解像度: 10m・20m・40m・80m/ピクセル
  • 画像ソース: Sentinel-2 L2A、Sentinel-1 RTC、または両方

COG には1バンドにつき1埋め込み次元が格納され、値は **符号付き8ビット整数(int8)**で -127〜+127 の範囲(-128 は nodata)。浮動小数点ベクトルへの復元は olmoearth_pretraindequantize_embeddings 関数で行う。

埋め込みの主要ユースケース

以下の例はすべて OlmoEarth-v1-Tiny(192次元)、40m解像度、Sentinel-2 L2A コンポジット(変化検出のみ月次、それ以外は年次)を使用している。

類似検索(Similarity search): “もっとこれに近い場所”を探す

クエリとなるピクセルの埋め込みを取得し、全ピクセルとのコサイン類似度を計算するだけでヒートマップが得られる。カリフォルニア州マーセド都市部をクエリにすると、市街地・道路回廊が高スコアで浮き上がり、農業用地との区別がラベルなしで実現する。

農業地ウィンドウをクエリに切り替え、そのエリアの埋め込みの平均ベクトルを使うと、コサイン類似度 0.89 以上の場所はすべて灌漑農地の圃場であり、空港・貯水池・乾燥草地は類似度がゼロ付近に留まる。訓練データもラベルも不要で、埋め込み空間内のドット積だけで判別できる。

少数ショット分類(Few-shot segmentation): 少ないラベルで土地被覆マップを生成

類似検索が「どこが似ているか」を教えるのに対し、面的なラベルが必要な場合は線形分類器で対応できる。

ベトナム・カマウの沿岸マングローブ地域で実証した結果:

  • ラベル数: 60ピクセル(マングローブ・水域・その他の3クラスを各20件)
  • ラベルソース: ESA WorldCover 2021
  • 分類器: 特徴量の標準化 + ロジスティック回帰
  • 精度: 重み付き F1 = 0.84
import rasterio
import numpy as np
from sklearn.pipeline import make_pipeline
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
from sklearn.linear_model import LogisticRegression

# Studio からエクスポートした 192バンドの埋め込み COG を読み込む
with rasterio.open("embeddings.tif") as ds:
    emb = ds.read().astype(np.float32)  # (192, H, W)
C, H, W = emb.shape
X = emb.reshape(C, -1).T  # (H*W, 192)

# ラベル付きピクセルで学習し、全ピクセルを予測
clf = make_pipeline(StandardScaler(), LogisticRegression(max_iter=2000))
clf.fit(X[train_idx], labels[train_idx])
prediction = clf.predict(X).reshape(H, W)

ラベル数を30から300に増やしてもほとんど精度が変わらないのは、埋め込みが事前学習段階で生態的な区別を内部表現に組み込んでいるためだ。より大きな Base バリアント(768次元)ではさらにリッチな表現が得られる。

変化検出(Change detection): 変化した場所を即時特定

月次解像度の埋め込みを異なる時期で比較するだけで変化を検出できる。2023年9月と2024年9月のカリフォルニア州バット郡の月次 Sentinel-2 埋め込みをピクセルごとにコサイン距離で比較した結果、2024年パーク火災(2024年7月〜9月)の焼損跡がラベルなしで即座に浮き上がった。

教師なし探索(Unsupervised exploration): モデルが見ている構造を可視化

クエリも参照ラベルもない場合、**主成分分析(PCA)**で3次元に圧縮し RGB にマッピングすることで疑似カラー画像を生成できる。似た埋め込みは自動的に似た色になる。オランダ・フレヴォラント(干拓農業地帯)への適用例では、農地の区画・水域・都市部がそれぞれ異なる色相で明確に区別され、埋め込みが景観構造を自律的に内部化していることが確認された。

高精度が必要な場合のファインチューニング(SFT)

上記の例はすべて凍結した埋め込みを使用しており、タスク固有の学習は行っていない。より高い精度が必要な場合、Studio は Supervised Fine-Tuning(SFT)——ユーザー自身のラベルでタスク固有のモデルヘッドを訓練する機能——もサポートしており、一般的に凍結特徴量への線形プローブより高性能になる。

制限事項

  • 入力画像の品質が埋め込み品質に直接影響する。持続的な雲被覆・大気アーティファクト・コンポジット期間中の観測欠損は結果に影響する
  • 用途ごとに上記の検証手法でエンベディング品質を事前確認することが推奨される
  • OlmoEarth Studio のカスタム埋め込みエクスポートはアクセス申請(Reach out)が必要。公開モデルを使った自前の埋め込み計算は申請不要

参考リンク: