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2026.08.21

OpenAI がビジネス利用でAnthropicに追い上げ——Rampの7万社データが示す企業AI支出の実態

記事のサマリー(TL;DR)

  • Rampの7万社超データで、Anthropicが約44% vs OpenAIが約40%(2025年7月時点)
  • Q3ではOpenAIの成長速度がAnthropicを上回り、GPT-5.6 Solが開発者に支持
  • Ramp顧客のうちAIに課金する企業の割合は3月に50%超、7月には約56%に到達

国内の法人AI支出構造と、このシェア変動から読み取れる調達判断のポイント

Rampのデータはあくまで米国・テック寄りの企業群を対象にしていますが、日本の情報システム部門や経営層にとっても、示唆するところは小さくありません。

第一に、企業AIの「スイッチングコスト」が依然として低いという点です。Anthropicは2024年末から2025年前半にかけてClaudeの品質評価でOpenAIをリードし、法人シェアで41%対39%と逆転しました。しかしOpenAIがGPT-5.6 Solをリリースすると再び勢力図が揺れています。日本のSaaS・EC事業者でも、APIを切り替えるだけで利用モデルを変更できる構成を採用しているケースが多く、ベンダーロックインが起きにくい反面、選定根拠が「最新モデルの性能」に引きずられやすい構造は同様です。

第二に、価格とデータ保持ポリシーが採用障壁になりうるという点です。AnthropicがFableユーザーに対してデータを30日間保持すると通知したことが反発を招きました。日本では個人情報保護法や業界ガイドラインに基づくデータ取り扱い要件が厳しく、特に金融・医療・人事領域のSaaS利用企業では、海外AIベンダーのデータ保持ポリシーが導入可否の実質的なハードルになります。

第三に、AI有料利用率が50%超になったという市場の成熟度は、日本でも法人向けAI予算が「試験的な経費」から「継続的な業務コスト」へ移行しつつあることと重なります。生成AI活用を検討する際、単一ベンダーへの集約ではなく、用途別にモデルを使い分けるマルチモデル構成が現実的な選択肢になっています。

詳細

OpenAIはかつてリーダーだったが、2025年5月に逆転された

OpenAIとAnthropicはいずれもIPOに向けた財務開示に至っていないため、外部データが市場動向を把握する主な手段となっています。法人向けクレジットカード・経費管理サービスの**Ramp(ランプ)**が公表した最新データによると、米国ビジネスユーザーの間でOpenAIがAnthropicに追い上げをかけていることが明らかになりました。

OpenAIはもともと法人・一般消費者の双方でリードを保っていましたが、2025年5月にAnthropicがRampの法人課金ユーザーシェアで41%を獲得し、OpenAIの39%を上回りました。その後OpenAIはリードを取り戻せておらず、2025年7月時点でAnthropicが約44%、OpenAIが**約40%**という状況です。

このデータはRampのビルペイおよびコーポレートカードを通じて数十億ドルを支出する7万社超の米国企業を対象にしています。Rampは多業種に顧客を持つものの、シリコンバレー発の法人カードという性格上、テック業界に偏る傾向があります。

Q3でOpenAIの成長速度が上回る——背景にGPT-5.6 Solの評価

Rampのエコノミスト、**Ara Kharazian(アラ・カラジアン)**氏によると、直近のデータはQ3において(四半期内でのここまでの期間に限れば)OpenAIの成長速度がAnthropicを上回っていることを示しています。ただし四半期末まで1か月残っており、トレンドは十分に変わりうると同氏も認めています。なお、Rampは実際の支出金額は非公開とし、シェアの割合のみを提供しています。

Kharazian氏はX(旧Twitter)上で「GPT-5.6 Solは非常に優秀で、開発者の選択肢として支持が高まっている」とコメント。一方で「Fable 5は価格と規制当局が課したデータ保持要件が影響し、採用実績・実用面の両方で期待を下回った」とも述べています。

Anthropic「Fable」のデータ保持問題が反発を招く

FableはAnthropicの上位モデルティアで、汎用チャットボットよりも特定用途に絞った設計です。ただし価格の高さに加え、AnthropicがFableユーザーのデータを30日間保持すると通知したことで批判を受けました。このポリシーは、データ主権や機密情報の取り扱いに敏感な企業ユーザーにとって採用の障壁となっています。

市場全体は拡大中——AI有料利用企業が56%へ

Rampのデータはシェア争いの激しさを示す一方で、両社ともに収益を伸ばせる環境にあることも示唆しています。Ramp顧客のうちAIサービスに課金している企業の割合は2025年3月に50%を超え、**7月には約56%**に達しました。

市場全体のパイが拡大しているため、シェアを多少奪われても絶対値での収益成長は続く構造になっています。ただし、企業がモデルのリリースのたびにベンダーを切り替えるほどの流動性は、投資家にとって「エンタープライズAI支出の粘着性(スティッキネス)」への疑問を呼ぶ要因にもなります。

本データはRamp経由で支出する企業群を対象としており、American Expressなどの支出管理ツールを利用する大企業は含まれていません。市場全体を反映するものではなく、傾向を示す参考指標として位置づける必要があります。