解決できる課題 事業紹介トップ 経営データ分析基盤 AI導入・業務改善 AI 業務アプリ 基幹システムのWeb化・段階移行 複雑な SaaS を専用 UI に Shopify Plus 移行・拡張 生成AI 活用(Multi AI) SEO / AIO / 広告運用 顧問・アドバイザリ インフラ構築 自社メディア投資・開発
AI導入 AI導入・業務改善 ChatGPTの社内導入 OpenAI Codex導入 AI運用・定着 Claude / MCP 総合 Claude Cowork Claude Code 導入支援 Claude Code 使いこなし支援 Claude Design MCP 開発・サーバー構築
EC構築・移行 Shopify Plus トップ EC-CUBE からの移行 大手カートからの移行 Shopify 通常プラン EC サイト構築
実績
業界ニュース 業界ニュース トップ AI ニュース └ Claude └ ChatGPT・Codex └ Gemini └ その他 Shopify ニュース SaaS ニュース お知らせ(自社発信)
会社情報 相談する
2026.10.02

Web サイトビルダー Studio が W3C に加入した理由、CTO 諸田氏にインタビュー

記事のサマリー(TL;DR)

  • Web サイト制作からホスティングまでを提供する Studio(studio.inc)が、サイボウズと同時期の 2025年2月に W3C へ加入しました。
  • Studio は加入後すぐに Web Font ワーキンググループに参加し、CJK フォントの読み込み負荷という課題に対応するため IFT(Incremental Font Transfer)という策定中の仕様の実装に取り組んでいます。
  • サイボウズのデザインテクノロジスト @saku が、Studio の CTO 諸田氏にインタビューする形式のコラボブログとして、両社がそれぞれ W3C に加入した経緯を聞き合う企画が実施されました。

詳細

Studio という会社について

Studio は、Web サイトの制作から公開・運用までをホスティング込みで支援する Web サイトビルダーを提供する企業です。諸田氏によると、単にツールを提供するだけでなく、「社会の皆さんが諦めてしまっている部分」をプラットフォームで解決し、ユーザーが本当にやりたいこと・やるべきことに集中できるようにする “Unleash Creativity” というビジョンを掲げています。

諸田氏は、長期的には組織内部の改善にも踏み込む可能性があるとしつつ、現時点のスコープは Web サイト制作から始めていると説明しています。ユーザーが「自分から発信しよう」「社会に表現していこう」とアクションを起こす動きを本気で支えたいという考えを示し、モリサワなど分野の異なるサービスとも連携し、より価値のあるサービスを目指す意向を述べています。また「社会」という言葉について、「会社」のような単位ではなく「一人ひとりの個人」も含めて捉えていると説明しました。

Studio が W3C に入った理由

諸田氏は、コンピュータサイエンス出身という背景もあり、以前から W3C の存在は知っていたと述べています。最近になって W3C を見つけたわけではなく、Studio が事業を続けて 10 年目を迎えるなかで、自社のビジョン “Unleash Creativity” が目指す世界と W3C のビジョンが近い、むしろ強く共感できる内容だったことが、加入の背景にあると説明しています。

諸田氏は、エンドユーザー向けの実装を担う立場として、世界を変えたいという思想を仕様や規約の設計(Web 標準)にフィードバックし、次の理想を考えるというループを回すことが重要だと述べています。Studio は創業初期にはユーザーがいなかったため、仮に当時 W3C に加入しても「思想に共感します」としか言えなかっただろうとしつつ、現在は数万人のユーザーと数万サイトが展開されている状態にあり、実装を試してフィードバックのループを回せる段階に来たと判断し、2025年2月に加入したと説明しています。

諸田氏は “Unleash Creativity” の根っこにある思想は W3C が掲げるものと同じで、デザインを重視する考え方も、W3C がより広義な言い方をしているに過ぎないとの見方を示しました。

加入後に取り組んだ IFT(Incremental Font Transfer)の実装

Studio が W3C 加入後すぐに取り組んだのは、Web Font ワーキンググループに参加して行った IFT(Incremental Font Transfer)という、策定段階にある仕様の実装です。諸田氏は、仕様策定には時間がかかるが、それは必要な時間だとの考えを述べています。

Studio には、読み込みが重くなりがちな CJK フォントの扱いという課題があり、自社でレンダリングシステムの実装を持っているため、ブラウザ側の対応を待たずに実装できるとしています。これにより、数万サイトへの展開時にどのような Issue が生まれるかを仕様の議論の場で共有できるとしています。

このほか、ワーキンググループではないものの Web Sustainability Guidelines(WSG)に関連し、プラットフォーム側でできる対応を数万サイトに適用した場合の効果をフィードバックすることも検討していると述べています。

諸田氏は、課題を突き詰めれば W3C で考えても自社で考えても似たところに行き着くとしたうえで、既に W3C で議論されていた課題感と Studio の課題感が合致し、足がかりとなる仕様・実装もある程度進んでいたため、「やらない」という選択肢は考えにくかったと振り返っています。

会社として Web 標準活動に取り組む考え方

諸田氏は、個人のエキスパートに任せきりにするのではなく、会社として W3C での活動に取り組む姿勢について、「未来に Bet することの方が大事」という感覚があると述べています。合理的に考えればブラウザベンダーのような大きな組織が対応し、それを汎用的に展開した方が多くの人が恩恵を受けられる可能性があるとしつつも、Studio としてはそこに委ねるのではなく自ら取り組みたいという考えを示しました。

Web 系のスタートアップで W3C に加入し活動する例は限られているとの @saku の指摘に対し、諸田氏は中長期的な視点での差別化という側面があることを認めています。

トップカンファレンスとしての W3C

諸田氏は、Studio が W3C に加入したことについて、外部に特に示したいメッセージはなかったと述べています。研究領域出身の経験から、何かを良くしようとする際にはまずトップカンファレンスをサーベイし最先端を把握する、という考え方があり、W3C への加入もそれと同様に、未来に対する最先端の議論に視点を置くための行動だったと説明しています。

W3C での活動について、知見を「持ち帰る」というより「現地に行って周りを巻き込んでいく」ことを重視しているとし、ブラウザを作る側と末端で小さなサービスを作る Studio とでは課題の捉え方が異なるため、ビジョンを一致させておかないと長期的にズレが生じるとの考えを述べています。W3C で 1〜2 歩先を考えることと、社会で 5 歩手前から実装することを行き来し、知見を持ち帰るだけでなく返しながら、次の課題にも取り組んでいきたいとしています。

現在アクティブに参加しているのは Web Font の分野で、サステナビリティやアクセシビリティについてもガイドラインの議論に加わりつつ、Studio がどのチェックポイントを満たせているか、その意図をエンドユーザーにどう伝えるかを検討し、実装も進めているとのことです。また、AI が Web をどう見るかというテーマについても、EC をテーマとした先日のワークショップに参加し、実際のトラフィックやエンドユーザーの困りごとを標準の議論に持ち込もうとしていると述べています。

W3C の活動が短期的な価値として説明しにくいという指摘に対し、諸田氏は、Studio が大事にしてきたデザインの本質はブランドとしての信頼や情報発信のエビデンスを重視することにあるとし、W3C のような団体と取り組むことで自社だけでは考えきれない広いスコープを取り込めると説明しています。W3C の仕様をそのまま伝えてもわかりにくいため、実際のメリットを見せ、その影響をまた W3C に返すという形で、マーケティングへの役立ち方など実際の価値に置き換えて顧客に伝えられると述べ、AI のトラフィックやパフォーマンス、アクセシビリティについては価値を説明しやすくなってきたとの感触を示しています。

W3C は「信じたままの場所」だった

諸田氏は、TPAC(W3C の年次イベント)でワーキンググループに参加しようとした際、思った以上に簡単に参加できたと述べています。国際化のワーキンググループでは参加者が8人程度しかおらず、オブザーバーのつもりで行ったところ自己紹介を求められたというエピソードを紹介しました。諸田氏は、これが OpenAI や Anthropic のような企業に飛び込みで関わろうとした場合とは異なる、開かれた場であると述べ、「信じたままの Web だった」と表現しています。一方で、やりたいことに対してまだ満たされていない部分も含めて「信じたままだった」とし、受け身の姿勢で臨んではいけないという点も実感したと述べています。

社外の反応については、サイボウズのように Studio の W3C 加入に興味を持って声をかけてくる人が増えたことを挙げ、ビジョンの近い人たちとつながれたことをポジティブに捉えています。社内では W3C が「意外と近い」存在として実感され始めており、まだ何も完成しておらず先は長いという状況を自然に受け止める雰囲気が生まれたことも良い変化だったと述べています。

W3C 加入を公表するつもりはなかった

諸田氏は、Studio が W3C に加入したこと自体を、当初は外部に発表するつもりがなかったと明かしています。研究でトップカンファレンスに行くのが「普通」であるのと同様の感覚で捉えており、特にアクセシビリティについて発信する際に W3C に加入していないのはおかしいという考えがあったとのことです。加入の経緯や理由に関心を持ってもらえたときに初めて話すのが自然だと考えており、サイボウズがプレスリリースを出していなければ、Studio としても特に公表していなかった可能性があると述べています。

諸田氏は、IFT の実装のように、仕様策定の過程で Issue が出た際にフィードバックし議論する必要があり、参加資格がなくても一部対応できるとしつつも、会社としては参加資格を持っておく方が望ましいとの考えを示しました。

今後取り組みたい活動とビジョン

諸田氏は、フォントに限らず、思想が設計になり実装され、ユーザーからのフィードバックを経て再び思想に戻るという流れを、小さい規模でもよいので複数重ねていくことが、W3C で取り組みたいことだと述べています。そうした小さなループを積み重ねなければ、長期的に目指す方向に進めるかは難しいとの考えを示し、仕様を作るだけでなくフィードバックを重ねて価値を大事にし、利用者が意識せず自然に使える状態を作ることが重要だと述べています。

また、Web の思想に直接共感する人は一部であり、Web の先で別の活動をしている人たち(ハードウェアを作る人や陶芸家など)を支えながら、そこで得た知見を Web に還元していきたいとの考えを示しています。情報をつなぎ伝えるという点で、アナログの紙に相当するデジタルの存在が Web サイトであるとし、それを支えることが Studio のやりたいことだと述べました。W3C 全体では「Web ページ」は一部の話題であり、加入時に村井氏から「自分は今は海底ケーブルを担当している」と言われたというエピソードも紹介されています。フェイクニュースなどの問題がある中で、Web を成り立たせるための良い土壌が必要であり、使う人に選ばれながら次の世代に向けて元々の思想に近い Web を残したいという思いは変わらないと述べています。

10 年後のありたい姿

10 年後に W3C に参加している Studio の姿について尋ねられた諸田氏は、議論の場で「思想」に関する話ができているとよいと述べています。仕様に落ちる過程を経たうえで、その仕様が本当に意図通りかを議論し、AI のような新しいテーマについてもどのような思想で次につなげるかを、実装を踏まえた現実的な視点とあわせて話せるようになりたいとしています。IFT については、仕様面の議論は進んでいるものの、どのような世界を目指しているのかをまだ自分たちの言葉で説明しきれていないとし、Web Font が速くなることの意味を、同じ思いを持つ人たちと議論し合えるようになりたいと述べて、インタビューを締めくくっています。