記事のサマリー(TL;DR)
- SmartHRのCRE(Customer Reliability Engineering)部マネージャーのa-know(井上)氏が、7月の「SRE Lounge Hiroshima #2」と9月に開催された4つのSREコミュニティイベント、計5つに参加しLT登壇しました。
- 発表内容は「SmartHRのCREがSREの在り方をお手本にカスタマーサクセス業務をソフトウェアエンジニアリングの観点で捉え直そうとしていること」「お客様が実際に得たアウトカムに着目したオブザーバビリティ(Customer Observability)の獲得が現在最も大きなテーマであること」「同様の取り組みをしている人やヒントを持つ人の話を聞きたいこと」の3点を中心としていました。
- 各イベントでの他登壇者の発表を通じて、「End-to-End SLO」「Implicit SLOs」といった概念を新たに知り、「SRE × QA」が複数のイベントで話題になっていたと報告しています。
詳細
2026年9月、SREコミュニティが盛り上がっていた
筆者によると、2026年9月はSRE(Software Reliability Engineering)コミュニティによるイベントや勉強会が多数開催されていました。把握できた範囲として、以下のイベント名が挙げられています。
- TechBull mini LT&交流会!#4
- [SRE AI活用事例] 減らせ!TOIL削減大作戦!
- もう一度考えるSRE #2 in 福岡 /「越境するSRE」
- Nokuchi.sre#0 〜プレオープン〜【増席】【LT枠+】
- Tamachi.sre#6
- gotanda.sre#1
- Sapporo.sre #0
SmartHRのCREは現在、「Customer Observability(顧客可観測性)」をテーマに掲げ、その実現方法や価値の最大化を模索しているとのことです。オブザーバビリティの分野ではSREに蓄積があることから、自分たちの考えへのフィードバックや学びを得る目的で、上記コミュニティイベントのうち4つと、7月に開催された「SRE Lounge Hiroshima #2」を合わせた計5つのイベントに参加し、それぞれでLT登壇したと述べています。
各イベントで発表した内容
イベントごとに細部は変えつつも、おおむね2パターンの資料で発表し、訴えたかった点は次の3つだったとしています。
- SmartHRのCREは、「SREの在り方」をお手本に、「ソフトウェアエンジニアリングの観点で、カスタマーサクセス業務を捉え直す」チャレンジをしようとしていること
- そのなかでも、「お客様が実際に得られたアウトカムに着目をしたオブザーバビリティ(可観測性)の獲得」が、現在もっとも大きなテーマであること
- 既に似たような取り組みをしている人やヒントを持っている人の話を聞きたいこと
筆者は、SREコミュニティに飛び込んだCREを各コミュニティが温かく受け入れ、ディスカッションにも応じてくれたと述べています。
SRE Lounge Hiroshima #2(7月26日・広島)
最初に参加したのは、7月26日に広島で開催された「SRE Lounge Hiroshima #2」です。筆者は隣接する岡山県に住んでおり、開催の前々日ごろに参加を決めたとのことです。筆者を含め4人の発表に加え、飛び入りLTも1件あり、付箋を使ったグループディスカッション(座談会)も行われました。
特に印象に残った発表として、宇田さんによる「システム監視を システムを監視するだけで終わらせないために」が挙げられています。SLI、SLO、SLA、CUJといった用語の定義と活用方法から始まり、マルチテナントSaaS製品でのSLO(サービスレベル目標)実装の実践経験、チームや組織をまたぐSLO定義と適用の課題について語られたとのことです。
TechBull mini LT&交流会!#4(9月2日)
2つめのイベントは9月2日開催の「TechBull mini LT&交流会!#4」です。主宰の@adachin0817氏とは筆者にとって10年以上ぶりの再会で、同氏は「すべてのジュニアに、自信と挑戦のチャンスを」というフレーズを掲げ、ジュニアエンジニアの成長支援を行うエンジニアコミュニティを立ち上げているとのことです。このイベントでは筆者を含め10人以上が発表しました。
特に印象に残った発表として、@z63d_氏による「続・新しいSLOが良い感じにハマっている話」が紹介されています。「SaaSにおけるSLOの効果的な実装と運用」をテーマとし、「6か月間で3件の重要なサービス劣化がSLO監視によって検知され、対応された」という実績が紹介されました。また「SLO駆動の運用のメリット」として、「SLOを設けたことで、これまで対処されにくかったパフォーマンス問題の優先順位付けと解決が可能になった」「サービス全体の信頼性向上と継続的な改善サイクルを促進した」という説明があったとのことです。
もう一度考えるSRE #2 in 福岡 /「越境するSRE」(9月11日)
3つめは9月11日に福岡で開催された「もう一度考えるSRE #2 in 福岡」です。副題が「越境するSRE」だったことから、筆者はLT内で「CREが越境して来ちゃいました!」「みなさんもぜひCREに越境してきてください!」と呼びかけたとのことです。
このイベントでも筆者を含め4人が発表し、株式会社TopotalのVTRyo氏による「越境するなら専門用語を使うな高校校歌」というタイトルの発表が紹介されています。内容としては次の点が挙げられています。
- 効果的な協働には専門領域や役割の壁を越えて協力することが必要であること
- エンジニア・デザイナー・ビジネスパーソンなど、相手の視点を理解することがコミュニケーションにおいて重要であること
- SREの概念を徐々に紹介することで協力と理解を得やすくなること
発表内で紹介された書籍『他者と働く』(宇田川元一 著)は筆者も今年読んでいた本だったとのことです。
Tamachi.sre #6(9月17日)
4つめは「Tamachi.sre #6」です。会場にはドラが用意されており、「LTは5分」というルールに合わせて時間が来るとドラが鳴らされるものの、発表はキリのいいところまで続けてよいというルールだったと紹介されています。このイベントでは3本の発表と3本のLTがありました。
株式会社Topotalの@gr1m0h氏による発表「品質と信頼性を地続きにする」が紹介されています。@gr1m0h氏はSRE as a Serviceを提供する株式会社Topotalで現役のSREとして活動しており、「現在、とてもQAに興味がある」と話していたとのことです。発表内容としては以下が挙げられています。
- QAとSREは重複しつつも役割が異なり、特に開発環境と本番環境間のマトリックスにギャップが存在すること
- SREの関与は設計段階から本番までの信頼性をカバーすること
- QAとSREチームの統合により、不具合やインシデントからの学びが向上し、一貫した品質管理が可能になること
- オブザーバビリティとデータ統合はギャップを埋め、部門横断的な洞察を可能にする基盤であること
筆者は、SmartHRのCREとは異なる角度から「お客様からの信頼性」にアプローチしようとしていることが伝わったと述べています。
また、LTでは@yu-den氏による「SREへの勘違いに気づいた後の話」も紹介されています。@yu-den氏はSRE Nextに参加し、それまでSREに抱いていた「主にインフラや運用に特化したもの」というイメージが誤っていたことに気づいたと話し、「SREは役割というより、スキルや活動に関するもの」であり「SREを構成するスキルは、QAなど他の役割でも学び、適用できる」と述べていたとのことです。@yu-den氏は日頃QAとして活動しており、SREのプラクティスを日々のQA業務に取り入れているとも話していたとのことです。
gotanda.sre #1(9月・同日にSapporo.sre #0も開催)
5つめは「gotanda.sre #1」です。この日は「Sapporo.sre #0」も同日開催されており、遠隔で集合写真を撮影したとのことです。セッション2本、LT5本というイベント構成でした。
株式会社YOUTRUSTの寺井氏による「インフラ、バックエンド、フロントエンドのすべてを最新にする方法」が特に印象的だったと紹介されています。内容は、インフラ・バックエンド・フロントエンドシステムで利用しているライブラリ群のアップグレードタスクへの取り組み方についてで、以下のような点が挙げられています。
- パッチ、マイナー、メジャーのバージョン種別に基づき、ライブラリのアップグレード状況を可視化する簡単なスコアリングの仕組みを構築したこと
- 安全なアップグレードの自動マージ化やAIによる自動レビューで手作業の負担を軽減したこと
- 「アルバイト募集」という形でメンバーを募り、自発的にライブラリアップデートに取り組む人たちでチームを結成したこと
- どんな小さな貢献でも歓迎し褒め称えるようにしたこと
5つのイベントを通じて得た学びや気づき
筆者は、懇親会などを含め参加者と多くの会話・相談・ディスカッションを行ったとした上で、新しい気付きがいくつかあったと述べています。
一つは、「SmartHRのCREが獲得しようとしているものは、End-to-End SLOに近いのかもしれない」という気付きです。「End-to-End SLO」というキーワードは筆者にとって初めて知るものでしたが、株式会社TopotalのVTRyo氏による2026年5月のクラウドネイティブ会議2026での発表資料では、CUJを起点とした深いカバレッジを持つ「最も重要な機能の信頼性」、ユーザー価値という共有指標として説明されていたとのことです。同資料内の「サービスSLOの積み上げだけでは、ユーザーの『商品を買って受け取る』目的は守れない」という表現も、筆者が感じている問題意識と一致していたと述べています。
また、「Implicit SLOs」というキーワードも一連のイベント参加を通じて知った概念とのことです。筆者は、それまでのプロダクトが顧客に提供してきたサービスの質は、implicit(暗黙のうち)に顧客が抱く「信頼性」を形成するものであり、それを抜きにして顧客信頼目標を掲げ目指すことはできないと気付かされたと述べています。
さらに、CREと直接関係しないものの、「SRE × QA」については複数のイベントでいろいろな人が語っていたとの印象を持ったとし、今後トレンドになっていく予感がしたと述べています。
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筆者は、この夏参加した5つのSREコミュニティイベントについての参加レポートとして本記事を締めくくり、SmartHR CREでは現在、CREの確立とCustomer Observabilityの模索に一緒に取り組む人を募集しているとしています。