記事のサマリー(TL;DR)
- Scrum@Scale 採用チームで、Day 1〜5 にメンター毎日1on1・Notion Daily log 共有で透明性を確保
- Day 16〜25 で個人ミッションを確定し、NotebookLM × Gemini 連携でポストモーテム改善案を立案
- Day 26〜30 でアンケート→合意形成→運用切り替えまで完結。Claude Code 権限は月初申請が必須
SmartHR × AI ツール活用環境を社内導入する際に参考になるポイント
SmartHR は勤怠管理・給与計算などの業務 SaaS として国内企業に広く導入されているが、本記事はその開発組織内部での AI ツール運用実態を公開した一次資料として読める。注目点は3つある。
まず、Notion AI・Claude Code・Gemini・NotebookLM を役割分担して併用している点だ。Notion AI は社内用語検索や Slack 情報の横断検索に使い、NotebookLM で社内ドキュメントのコンテキストを読み込ませたうえで Gemini と連携させることで「精度の高い回答」を得ている。単一モデルに依存せず用途別に使い分ける構成は、社内 SaaS 環境での AI 活用設計の参考になる。
次に、Claude Code の権限付与が月初の限られた期間にしか申請できないという運用制約が明示されている。外部向け SaaS 利用契約では組織ポリシーによってアクセス管理が厳格化されており、入社直後のタイミング管理が実務コストに直結する事例だ。
さらに、kintone や Salesforce などの業務 SaaS 上で専用 UI を構築・運用している組織においても、同様に「Notion でログを残しながら AI で横断検索する」構成は現実的な選択肢となる。特に情報が Slack と Notion に分散している環境では、NotebookLM によるコンテキスト集約が検索精度の底上げに効く。
詳細
Day 1–5:「仕事が始められる状態」を作る
SmartHR のオンボーディングタスクは「全新入社員向け」「所属する QA 組織向け」「担当プロダクト向け」の3種類で構成されており、いつまでに何をすべきかが明確に整備されている。最初の2〜3日はツール申請と環境構築、後半はドキュメント精読と開発フロー理解に充てた。フルリモート環境での不安に対しては、メンターが毎日1on1を設定して対応した。
この週で気づいたこと
Notion で「今日やったこと/明日やること/困っていること」をまとめた Daily log データベースを作成し、オンボーディングチャンネルで毎日共有。周囲から取り組みが見えやすくなり、透明性の担保に役立った。
Day 6–10:チームの開発フローと関係者を把握する
Scrum@Scale フレームワークを採用するチームのスクラムイベントに参加し、全体像を把握。同時に既存のオンボーディングテンプレートの重複・陳腐化タスクを整理し、次回入社者向けに更新した。
この週で気づいたこと
- Notion AI を活用し、ミーティング中に出た社内用語やツール申請方法をその場で検索・解決
- 期日付きオンボーディングタスクは Google Calendar のマイタスクに登録してリマインド設定
- times チャンネル(Slack の日報・雑談チャンネル)を自己紹介と同時に立ち上げ、ネットワーク形成を加速
Day 11–15:個人ミッションの検討と AI ツール環境構築
入社1か月以内に今期の個人ミッションを策定する必要があるため、担当プロダクトの現状把握と課題特定を並行して進めた。同時期に Claude Code と Cursor の権限申請・環境設定も実施。QaSST Tokyo 2026(品質保証本部主催のイベント)への参加で多くの QA エンジニアとオフライン交流を果たした。
この週で気づいたこと
Claude Code の権限付与申請は月初の限られた期間にしか受け付けられないため、入社直後に申請したことで利用開始までのタイムロスを回避できた。
Day 16–20:個人ミッション確定とスクラム改善タスクの着手
上長と認識をすり合わせてミッションを確定。確定後すぐ、レトロスペクティブで上がっていた Try「非同期での PRD レビューフェーズをリファインメント前に組み込む」を実行。エンジニアを含むチーム全体で進められ、プロセス統一の効果を確認した。
この週で気づいたこと
個人ミッション策定では AI ツールをフル活用。社内ドキュメントからミッション事例を収集し、NotebookLM でコンテキストを読み込ませたうえで Gemini と連携することで精度の高い検討が可能だった。
Day 21–25:個人ミッションの実行フェーズ
「ポストモーテム運用フローの改善」と「品質ダッシュボードの作成」という2つのミッションのうち、課題感が強い前者から着手。関係するエンジニア・PM にアンケートを実施した結果、「インシデントが起きてもポストモーテムが実施されないケースがある」「実施基準が曖昧で強制力がない」という課題が判明。基準を整理したドキュメントを作成し、オーバーオールデイリースクラムの場で「インシデント発生時は必ずポストモーテムを実施する」方針の合意を取り付けた。
アンケートでは「実施基準が曖昧」「振り返りが属人化している」といった声が多く集まった。
この週で気づいたこと
Notion のアンケートフォーム機能を使うと、結果の DB 作成とグラフ化がワンストップで完了し、全体共有資料の作成コストを大幅に削減できた。
Day 26–30:合意形成から運用開始まで完結
新ポストモーテム運用フローの合意を受け、運用マニュアルを更新して新フローへ切り替え。直近1〜2週間に発生した小規模インシデントを対象に、各担当エンジニアへ声をかけてテンプレートを使ったポストモーテム作成を開始した。
この週で気づいたこと
「アンケートで課題定義 → 他プロダクト・社内方針の調査 → 改善案の提案 → チーム全体の場で合意 → 運用開始」という一連の流れを踏んだことで、最短でプロセスをアップデートできた。各フェーズの議事録・アンケート結果は必ず Notion に残し、経緯を後から追跡できるようにした。
おわりに:30日を通じて掴んだ仕事の進め方
光の速さで行動に移す
SmartHR には「光:まずやってみる人がかっこいい」というバリューがある。社内用語「キョカシャザ」は「無責任に動く」ではなく「影響範囲が限定的でリスクの低い改善はまず試して、問題があれば調整する」スタンスを指す。本番環境の変更や影響範囲の大きな施策は慎重に扱いつつ、チーム内の小さな改善では「まず試す」文化がスピード感を生んでいる。
AI ツールをフル活用
Notion AI と Gemini を常時起動し、ミーティング中に分からない言葉が出たらその場で検索して理解する習慣を定着させた。Slack・Notion の過去情報を AI が横断検索できる環境が、右も左も分からない入社直後に大きく機能した。
アウトプットドリブン
最初から完璧を目指さず、方針・提案のたたき台を最速で作り、上長や関係者のフィードバックを受けながらブラッシュアップする。社内のフィードバック文化と組み合わせることで、チームで良いものを作るサイクルが回りやすくなっている。