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2026.06.06

SmartHR が Notion カスタムエージェントで AI 最新情報を毎朝 Slack 自動投稿する仕組みを構築

記事のサマリー(TL;DR)

  • Notion カスタムエージェントを 1〜2 時間で構築し、Anthropic・OpenAI・Google など一次情報のみを毎朝 3〜10 件に絞って Slack 投稿
  • 「要約」だけでなく「活用イメージ」「導入方法」を必須項目にすることで、情報閲覧が即日行動につながるケースが発生
  • 二次情報を排除・重複排除ルール・2 セクション構成(当日新規 + 直近 2 か月の再掲)で「読まれない情報量産」を防止

国内の開発チームが AI 情報収集自動化で注目すべき構成ポイント

SmartHR のように Claude Code・Cursor を日常的に使うチームは国内でも急増しているが、情報収集が属人的なまま口伝に頼っているケースは多い。本記事の構成が参考になるのは、「LLM API + GitHub Actions」などゼロから組む方法と比べて、Notion カスタムエージェントが巡回・要約・Slack 投稿・定期実行を標準機能で完結させる点だ。kintone や Salesforce などを業務基盤に使うチームでも、Notion をナレッジ DB として併用しているケースは多く、同様の構成をそのまま流用できる。また「活用イメージ」を勤怠管理プロダクトの文脈に絞ってプロンプトに指定する設計は、SaaS プロダクト開発チームが自社ドメインに特化した情報フィルターを持つ参考モデルになる。ハルシネーション対策として一次情報リンクを必須にし、二次情報を完全排除する方針は、情報精度を重視する情シス・開発チームが同様の仕組みを導入する際の基本原則として転用しやすい。

詳細

背景:AI ネイティブ開発チームの情報収集課題

SmartHR 勤怠管理チームでは Claude Code や Cursor をはじめとする AI ツールを日常的に活用し、開発プロセスそのものを AI 前提で再設計する取り組みを進めている。その中で顕在化した課題が「変化が速すぎて自社プロダクトにマッチする最新情報を取り逃す」という点だった。

具体的には以下の状況が続いていた。

  • 開発体験を大きく変えるアップデートを見逃すリスクを常に抱えていた
  • 「あのツール、最近こんなことできるようになったらしいよ」という口伝ベースの共有に依存し、情報の網羅性がなかった
  • 個人で RSS や X をウォッチするメンバーはいたが、チーム全体への情報浸透は属人的な状況だった

最初の失敗:RSS をそのまま Slack に流す

最初の対策として、RSS で収集した更新情報を選別なしに Slack へ自動投稿した。しかし結果として以下の問題が発生した。

  • 量が多すぎて Slack 上で流れ、ほとんど読まれない
  • 「自社プロダクトでどう使えるか」が不明で行動につながらない
  • 公式リリースノート(一次情報)と技術ブログ・まとめ記事(二次情報)が混在し、精度にばらつきが出る

二次情報は筆者の解釈が入るため元リリースの内容とずれたり、重要な制約条件が省略される場合があると判断し、一次情報のみに絞る方針へ切り替えた

目指した状態

失敗を踏まえて整理した理想像は 3 点。

  1. チーム全員が同じタイミングで同じ情報を得られる
  2. 単なるニュース羅列でなく、自社プロダクトへの活用方法まで含まれている
  3. 情報収集に個人の時間をほとんど使わなくてよい

基本設計:全体フロー

平日毎朝 9 時、Notion カスタムエージェントが公式リリースノート・公式ブログを巡回 → 3〜10 件にフィルタリング → Slack チャンネルに投稿 → チームが朝会で確認、という流れを採用した。

Slack には詳細本文ではなく「注目トピック 1〜2 件のサマリー + Notion ページへのリンク」のみを投稿し、詳細は Notion に蓄積する設計になっている。これにより過去の出力がナレッジベースとして機能する。

Notion カスタムエージェントを選んだ理由

代替として「LLM API を自前プログラムで呼び GitHub Actions で定期実行」「Zapier などの SaaS で構築」も検討したが、Notion カスタムエージェントを採用した理由は以下のとおり。

比較観点 Notion カスタムエージェント
実行基盤 Notion 標準機能で完結、自前インフラ不要
ナレッジ蓄積 過去出力がページとして自動保存される
導入コスト ノーコード設定でスモールスタート可能

エージェント設定の詳細

トリガー:平日毎朝 9 時に自動実行
出力先:チームの Slack チャンネル

プロンプトの構成ブロック

  1. 概要 — 何を集めてどこに投稿するか
  2. 出力フォーマット — 各トピックに含める項目(要約・活用イメージ・導入方法・リンク)
  3. 2 セクション構成 — 「今日の最新情報」と「再掲」の作り分け
  4. 重複排除 — 既出トピックの除外ルール
  5. 情報ソース(優先順位) — サービスごとの優先度定義
  6. フィルタリング基準 — 共有する価値があるかの判断軸
  7. 投稿先と形式 — Notion ページと Slack 投稿の作り方
  8. 不確実性の扱い — 確信が持てない場合は「要確認」と明記

工夫① 出力の構成

「活用イメージ」と「導入方法」を必須化

リリースノートの要約だけでは読んだ人が「ふーん」で終わりになるため、各トピックに以下の 4 項目を必須にした。

項目 目的 記載例
要約 何が変わったかを端的に伝える Claude Code にフック機能が追加
活用イメージ 自社プロダクトでどう使えるか CI 実行前の自動 lint 設定に活用できそう
導入方法 試すための最初の一歩を明確化 settings.json に hooks を追加して有効化
リンク 一次情報にすぐアクセスできる 公式ブログ / Changelog の URL

この設計により、Cursor の Shared Canvases を活用して Claude のスキル一覧を用途別カテゴリで表示するページを作成・チーム共有するなど、情報閲覧当日に行動するメンバーが実際に現れた。

2 セクション構成で「あとから効いてくる情報」を再利用

当日のリリース情報は当日に刺さらないこともある。プロジェクトの状況が変わった数週間後に急に試す価値が出るケースに対応するため、各ページを以下の 2 セクションに分割した。

  • 今日の最新情報 — その日の新規アップデート
  • 最近の重要アップデート(再掲) — 直近 2 か月以内でまだ試す価値が高いものを 3 件前後ランダムにピックアップ

再掲セクションをランダムピックにすることで、忘れかけていた情報と再会するきっかけを意図的に作っている。

重複排除ルール

  • 「今日の最新情報」と「再掲」で同じトピックを重複させない
  • 一度「今日の最新情報」に投稿したトピックは以後の「今日の最新情報」には再投稿しない
  • 直近 2〜3 か月の「AI 最新情報」ページを事前確認し、既出見出しを除外する

工夫② 情報の選別

情報ソースの優先順位

優先度 対象サービス
最優先(毎日チェック) Anthropic(Claude)・OpenAI・Google(Gemini / Vertex AI)
優先(重要度に応じ取捨選択) Cursor・GitHub Copilot・Devin
補助(話題性がある場合) Meta(Llama)・Mistral AI・xAI・LangChain・Hugging Face など

新しい AI サービスが登場した場合は初回だけトピック化し、継続追跡の価値があると判断したものは情報ソースリストに追加する運用としている。

フィルタリング基準

些細なバグ修正は除外し、以下に該当するものを優先する。

  • 体験が変わる新機能
  • 価格・制限・提供形態の変更
  • セキュリティ・コンプライアンスに関わる変更
  • 既存の開発・テスト・運用フローへの影響がある変更

AI 出力品質の担保

ハルシネーションリスクへの対策として以下を実施している。

  • 一次情報リンクの掲載を必須にし、読者が元ソースを確認できる状態を維持
  • 公式リリースノート・公式ブログのみをソースとして指定し、二次情報・噂レベルの情報を排除
  • 確信が持てない場合は断定せず「要確認」、導入方法が不明な場合は推測で書かず「要調査」と明記

執筆時点(2026 年 5 月下旬)での運用期間はまだ 2〜3 週間と短いため、品質が十分に担保できているとは断定せず、引き続き出力を観察する方針としている。

導入後に変わったこと

  • エコシステムの全体感が把握しやすくなった:毎朝同じ観点で情報が並ぶことで、クラウドエージェント周りの各ベンダー整備や各サービスの値上げ動向など、複数リリースを横並びで見て初めて気づけるトレンドが意識できるようになった
  • 情報格差が解消された:「知っている人は知っている」状態から全員共有へ移行し、「あのアップデート知ってた?」という会話が減り、「うちのプロダクトだとこう使えそう」という議論が増えた
  • 試すハードルが下がった:「活用イメージ」「導入方法」の必須化により、情報閲覧当日に実際に試すメンバーが現れた

今後の改善ポイント

  1. 「活用イメージ」の精度向上:現状の提案が「業務効率化に活用できそう」のように汎用的になりがち。チームが実際に取り組んでいる課題や直近の技術的関心事をプロンプトに反映させる仕組みを検討中
  2. フィードバックループの構築:朝会で話題になったトピックへのリアクションを収集し、エージェントのフィルタリング精度に反映させる仕組みを計画中
  3. 他チームへの展開:Notion カスタムエージェントの設定をテンプレート化し、他チームが情報ソースリストやフィルタ基準をカスタマイズして使えるようにする予定

まとめ

AIエージェントにチームの情報収集を任せる際に押さえるべきポイントは 3 つ。

  1. アクションにつなげる項目を必須にする — 「活用イメージ」「導入方法」を含めることで情報が行動に変わる
  2. 見逃し防止の再掲構造を入れる — 2 セクション構成で、休んでいた日の重要情報も拾える
  3. ノイズ除去のフィルタ基準を明文化する — フィルタなしは情報過多で読まれなくなる(実際にそうなった)

「AIツールを使いこなすための第一歩は、AI 自身に情報収集を任せることかもしれない」という気づきとして、人間は情報をもとにした判断と行動に集中できる構造を意図的に作ることの重要性が示されている。ただし、AI による情報収集が個人の情報収集を代替するわけではなく、偶然たどり着く発見や勉強会・雑談から生まれるヒントは個人が自ら情報に触れることでしか得られない。AI はチーム全員のキャッチアップのベースラインを引き上げ、各自が深掘りしたい領域を探索する時間を生み出すものとして位置付けられている。