記事のサマリー(TL;DR)
- 2026年7月18日(土)、滋賀県大津市の能楽ホール(大津市伝統芸能会館)で関西Ruby会議09が開催。SmartHRはSilverスポンサーとして協賛し、社内から2名(nori さん・kinoppyd さん)が登壇
- テーマ「照」のもと、午前2本・午後6本の公募セッションに加え、関西LT保安協会セッションを設定。PicoRuby×DMX512照明制御や Ruby 4.0 実験機能「Ruby::Box」、MCP サーバーの Rails 実装、mruby×Z80 8bit機など多様なトピックが揃う
- 前夜祭は7月17日(金)18:30〜に Kyoto.rb 主催(参加費6,000円)と Kyobashi.rb 主催のビアバッシュの2本立て。本編翌日の Official Party は大津駅直結の THE CALENDAR で19:00〜21:00(参加費5,000円)
Rails・MCP 開発者が注目すべき技術トーク
今回のセッション群は、Webアプリケーション開発の日常的な文脈と低レイヤ・実験的機能が交差するラインナップになっています。なかでも「torikago」セッションは、packwerk や Rails::Engine によるモジュラモノリスを採用している大規模 Rails プロダクトへの直接的な示唆があります。Ruby 4.0 の実験的機能「Ruby::Box」を使って実行時の境界を扱う gem の紹介であり、「構造上は分離できていても VM を共有しているため定数参照や monkey patch の問題が残る」という実運用上の課題に正面から切り込む内容です。同様に、Claude Code などの AI ツールから Rails 製 Remote MCP サーバー経由で外部デバイスを操作するセッション「ひとつの指示で、部屋にあかりを。」は、MCP サーバーを Rails で実装する際の OAuth 2.0 認証・Doorkeeper・Devise の役割を整理する実践的な内容として注目されます。Rails × MCP の構成を検討している開発者にとって、認証レイヤの設計方針を具体例から学べる機会です。
詳細
関西Ruby会議09 の概要
開催日時: 2026年7月18日(土)
会場: 大津市伝統芸能会館 能楽ホール(滋賀県大津市)
スポンサー: SmartHR(Silverスポンサー)
基調講演: オープニング=成瀬ゆいさん、エンディング=はすじょいさん
チーフオーガナイザーは SmartHR の ydah(わいだー)さん。関西Ruby会議08 からチーフオーガナイザーを務め、大阪の地域 Ruby コミュニティ「Kyobashi.rb」のCo-Founderでもあります。Ruby コミッタ・Lrama コミッタとして構文解析にも携わっており、SmartHR ではプロダクト基盤を開発しています。
会場となる能楽ホールには本物の檜舞台があり、人間国宝が能を舞う舞台の上で Ruby のトークを聞けるという他のカンファレンスにはない体験が用意されています。
テーマ「照」に込めた意図
「照」には複数の意味が込められています。
- 見えない構造を明らかにする: システムの裏側、アーキテクチャの設計思想に光を当てる
- 低レイヤ・電子工作: 関西の地域Ruby会議では伝統的に低レイヤトークが多く、LED で物理的に「照らす」ことも含む
- Ruby との出会いによる新しい道: 未知の領域にスポットライトを当て、自分の作ったものに光を当てる
テーマは狭く定義せず、発表者それぞれの解釈で持ち寄ることで多様なラインナップが形成されました。
キーノートスピーカー
成瀬ゆいさん(オープニングキーノート)
Ruby コミッターであり、Ruby 2.1 以降のリリースマネージャーとして毎年のリリースを取りまとめてきた方。「Ruby がどう作られ、どうリリースされ、どう維持されているのか」という普段意識しにくい視点から、これからの Ruby について話す予定です。
はすじょいさん(エンディングキーノート)
ZEN大学の教員であり、セキュリティ・キャンプ講師。低レイヤ、オートマトン、形式言語理論、言語設計の領域に精通しており、「Ruby コミュニティの外側から Ruby の構造を捉える」視点を持ちます。内側を守り続けてきた成瀬さんと、外側から構造を分析するはすじょいさんという対比が、一日の流れの軸になっています。
公募セッション タイムテーブル解説
10:50〜11:10「『照らす技術』をRubyで照らす」Shunsuke Michii さん
ステージ照明を制御する通信プロトコル DMX512 を、マイコン向け Ruby 実装 PicoRuby で扱うセッション。DMX512 はムービングライトなどを制御する業界標準プロトコルで、厳密なタイミング制御が求められます。Raspberry Pi Pico のハードウェア機能を活用して、Ruby からどのようにプロトコルを制御するかが技術的な見どころです。会場にムービングライトを持ち込み、Ruby コードでリアルタイム制御するデモも予定されており、テーマ「照」を文字どおり体現するトークです。
11:20〜11:40「Project Naraku 外伝 —— レールロード図で照らすOnigmoのバグ」shimokawa さん
RubyKaigi 2026 で発表された Ruby 専用正規表現エンジン Naraku と、現行の正規表現エンジン Onigmo の問題を、レールロード図エディタ Rubree で可視化するセッション。たとえば /ss/i が ß にマッチするケースのように、Unicode の多対多変換を伴う挙動や、図の上では対称に見えるのに実際の動作が対称にならないパターンを具体例で示します。Naraku が必要な理由を抽象論ではなく実例と可視化で理解できる構成になっており、RubyKaigi 2026 で Naraku に触れた方がさらに踏み込む機会にもなります。
(ランチ休憩)
大津のグルメ情報はカンファレンスの note にまとめられており、遠目のエリアへ行く場合はタクシーの事前手配・乗り合いが推奨されています。
13:10〜13:30「torikago – Ruby::Boxで照らすモジュラモノリスの実行境界」nori さん(SmartHR)
大規模 Rails アプリケーションでは packwerk や Rails::Engine でモジュールを分けても、実行時は同じ Ruby VM を共有するため、定数参照・monkey patch・暗黙の結合の問題が残ります。このセッションでは、Ruby 4.0 の実験的機能 Ruby::Box(1つの Ruby VM 内に独立した実行空間を作る機能)を使って module ごとの実行境界を扱う gem「torikago」を紹介。Ruby::Box との相性が難しい gem があること、性能面の課題など、まだ難しい点も率直に共有されます。
13:40〜14:00「ひとつの指示で、部屋にあかりを。」しげる。さん
AI エージェントと外部サービスをつなぐ MCP(Model Context Protocol) のサーバーを Rails で実装し、Claude Code のような AI ツールから LED を操作するセッション。ネットワーク越しに呼び出せる Remote MCP サーバーを、mcp gem を使う場合と自前実装する場合で比較し、OAuth 2.0 による認証・LINE Login との連携まで追います。Doorkeeper や Devise が普段何を解決しているかを認証レイヤから理解できる構成です。「Remote MCP は難しくない」というメッセージが、Rails 開発者の背中を押す内容になっています。登壇者の しげる。さんは滋賀県彦根市在住で、開催地・滋賀にゆかりのある登壇者でもあります。
14:10〜14:30「チャリンコ・オブザーバビリティ」kinoppyd さん(SmartHR)
オブザーバビリティの考え方をロードバイクに持ち込み、速度・ケイデンス(ペダル回転数)・パワー・心拍数といったセンサーデータを PicoRuby で処理してサイクルコンピュータとして実装するセッション。琵琶湖のほとりでの開催にちなんで、前日に琵琶湖を実際に走ってそのデータを当日披露する構想もあります(天候次第)。インフラやWebアプリで使われるオブザーバビリティの概念を、物理センサーと自転車という身近な題材で再解釈する内容です。
14:50〜15:10「Rubyで未来を照らす 〜占いを実装する技術〜」Kotomi Inoue さん
四柱推命を Ruby で実装するセッション。関西・伝統芸能・「照」から天照大神を連想し占いへつなぐ導入から始まり、干支・十干十二支・暦・命式計算といった多くのルールで構成される体系を、Ruby のオブジェクトやデータ構造として表現します。一見ふわっとした題材にある構造を読み解き、コードで扱える形にするモデリングの話としても楽しめます。Ruby の適用範囲の広さを示すセッションです。
15:20〜15:40「Can you see? I’m GC」yhara さん
Ruby 3.4 から実験的に導入された Modular GC(GC の実装を差し替えられる機構)を使ってカスタム GC を実装したセッション。GC が何をどのように見てオブジェクトをたどり、メモリを回収しているかを可視化と体験を通じて理解できる構成で、GC の大変さを体感できる仕掛けも用意されています。登壇者の yhara さんは、中学生のころ大津市立の中学校の科学部でプログラミングを学んだという縁があります。
15:50〜16:10「VMとAOTコンパイラ開発で照らす8Bit機の世界」Yuji Yokoo さん
Z80(8bit CPU)をターゲットに、組み込み向け軽量 Ruby 実装 mruby の VM と AOT(Ahead-Of-Time)コンパイラの両アプローチを比較するセッション。VM は実行時に1命令ずつ解釈する方式、AOT は事前コンパイル方式という対照的な2つの実装を同一題材で見られます。現段階ではセガのマスターシステムをサポート。現代の開発環境とは異なる制約(メモリ・CPU・開発環境)の中で Ruby を動かす試みを紹介します。
関西LT保安協会(16:30〜17:20)
関西の地域 Ruby コミュニティから推薦された方々によるライトニングトークセッション。「滋賀といえばイナズマ」「LT はライトニングトーク」「テーマが『照』」という文脈から、登壇者にスポットを当てて照らす場として設けられました。関西でおなじみの「あの CM」の一般財団法人をもじった名称でもあります。
前後イベント情報
Day0(7月17日・金)前夜祭 2本立て
| イベント | 主催 | 会場 | 時間 | 参加費 |
|---|---|---|---|---|
| 関西Ruby会議09 前夜祭 | Kyoto.rb | 下田屋(貸し切り) | 18:30〜20:30 | 6,000円 |
| Welcome Beer Bash!! | Kyobashi.rb | craft beer house B.B(貸し切り) | 18:30〜20:30 | 調整中(料理:オードブル、ビール:キャッシュオン) |
同時間帯に2つの前夜祭が開催されるため、雰囲気に合わせて選択する形です。
Day1(7月18日・土)Official Party
- 会場: THE CALENDAR(大津駅直結・ビエラ大津2階)
- 日時: 19:00〜21:00
- 参加費: 5,000円(イタリアンコース+飲み放題)
- 特別企画: 滋賀の彦根麦酒が特別に4タップを接続予定
本編会場の大津市伝統芸能会館から THE CALENDAR までは徒歩約30分。会場近くの大津市役所前駅(京阪)→京阪膳所駅→膳所駅(JR)→大津駅のルートが便利で、本編終了後に運営スタッフが先導する予定です。
コミュニティかわらばん
会場内に、参加者が関わるコミュニティや主催するカンファレンスのチラシ・フライヤー・ステッカーなどを置けるスペースを設置。Ruby 以外の言語・技術コミュニティも歓迎。来場者が自由に手に取れる形式で、多様なコミュニティとの出会いの場を提供します。
参加・宿泊情報
ホテルの空きが少なくなっており、宿泊を検討している場合は早急な予約が推奨されています。7月の連休とも重なるため、大津駅〜びわ湖浜大津駅エリアの宿泊が Official Party へのアクセスと琵琶湖観光の両面で便利です。
クロージングでは次回開催地を決定するアクティビティを予定(能舞台のためダーツは不可となり、別案を準備中とのこと)。