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2026.09.18

ファーウェイが Ascend 960DT AIチップを2027年Q1に前倒し発表——Nvidia 対抗の最新戦略

記事のサマリー(TL;DR)

  • ファーウェイは Ascend 960DT の発売を2027年Q3 → Q1へ約半年前倒し、性能は前世代比2倍と明言
  • 新アーキテクチャ「Peerium Computing Architecture」で最大256,000枚のアクセラレータカードを1台の巨大コンピュータとして束ねる構想を発表
  • 米中半導体摩擦の最中、Ascend 960 SuperPoD の規模は当初公表の15,488チップから4,096チップへ縮小——スケールアップ計画との矛盾も指摘

国内AIインフラ調達・モデル選定に関わる事業者が注目すべき点

米国の輸出規制によって日本企業がファーウェイ製 GPU/NPU を直接調達するシナリオは現実的ではありませんが、Ascend 960DT の台頭は日本市場にも間接的な影響を及ぼします。

まず、Nvidia の供給・価格交渉力への影響です。ファーウェイが中国国内で Ascend シリーズの大量展開を進めると、中国向け H20 など Nvidia の「輸出規制対応品」の需要が変動し、グローバルな GPU 供給計画やライセンス体制に波及する可能性があります。

次に、オープンソースモデルのトレーニング基盤の観点から。中国の AI ラボが Ascend エコシステムで大規模学習を加速させれば、Qwen・DeepSeek といったオープンウェイトモデルの進化ペースが上がります。日本企業がこれらのモデルを生成AI 基盤として採用する場合、モデルの選定・更新サイクルも短くなることを前提に運用設計を行う必要があります。

さらに、Peerium Architecture の思想——数十万枚のチップを単一の論理コンピュータとして扱う——は、クラウドプロバイダーのインフラ戦略に直結します。AWS・Google Cloud・Azure が同様のアーキテクチャ競争に追随する場合、国内企業が利用するクラウド AI サービスのスペックや料金体系にも変化が生じる可能性があります。


詳細

Ascend 960DT の発売前倒しと性能

ファーウェイは2026年9月17日、年次カンファレンス「Huawei Connect」において、次世代 AI チップ「Ascend 960DT」の一般提供を 2027年第1四半期(Q1) に開始すると発表しました。当初の計画は同年第3四半期(Q3)であり、約半年の前倒しとなります。

同社の広報担当者は TechCrunch に対して次のように述べました。「Ascend 960DT は2027年Q1に準備完了の見通しです。Ascend 960 チップはスケジュールより早く展開が進んでおり、性能は前世代比2倍を達成し、年々向上しています」。このタイムライン変更は、ファーウェイのローテーション制代行会長(Rotating and Acting Chairman)である**David Wang(王滔)**が同カンファレンスで正式発表しました。

この発表は、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席がワシントン D.C. で会談する予定の9月24日(発表の1週間後)を前にしたタイミングでもあり、地政学的な文脈でも注目されました。

Peerium Computing Architecture——数十万チップを1台のコンピュータへ

ファーウェイが今回あわせて公開したのが、**Peerium Computing Architecture(ピアリアム・コンピューティング・アーキテクチャ)**です。これはファーウェイ独自のインターコネクト技術「UnifiedBus」を使い、プロセッサ・メモリ・ストレージ・ネットワーキングを統合することで、数十万〜最終的には数百万枚の AI チップを「1台の巨大コンピュータ」として機能させることを目指すものです。

ローテーション制会長の**Eric Xu(徐直軍)**は声明の中で、Peerium により「学習(Training)と推論(Inference)の両方を対象とした大規模 AI コンピューティングシステムの構築が可能になる」と説明しました。

このアーキテクチャに基づく最初の製品群が、Atlas 950 SuperPoDAtlas 950 SuperCluster です。Atlas 950 SuperCluster は最大 256,000 枚のアクセラレータカードを接続できるとされています。

規模縮小の疑問——SuperPoD のスペック変更

ただし、今回の発表には疑問点も残ります。中国テック業界のアナリストである Rui Ma 氏は X(旧 Twitter)上で次の矛盾を指摘しました。ファーウェイは以前、Atlas 960 SuperPoD が 15,488 枚の Ascend 960 チップまでスケールできると発表していましたが、今週の発表では同システムのチップ数が 4,096 枚と記載されていました。

Rui Ma 氏は「チップ自体の発売は”大幅に”早まっているが、発表された SuperPoD は当初示されたものよりはるかに小さい」と指摘しています。

米国の輸出規制と「自国半導体」への信念

ファーウェイは米国による先端半導体技術の輸出規制が続く中でも、独自チップの開発を継続しています。Rui Ma 氏は「自給自足への賭けが今や非常に高くなっている以上、中国の半導体開発を止めることは無意味だと思う」と述べ、米国の規制がファーウェイの野望を阻止する効果には懐疑的な見方を示しました。

米中間の AI 開発競争については、双方で対照的な主張が展開されています。トランプ大統領は AI 業界が安全上の懸念からペース減速を求める声を退け、「米国が中国に対するリードを維持する必要がある」と主張しています。一方、Eric Xu は Financial Times の取材に対して「中国企業は、より強力な AI システムのリスクを完全に理解・対処できるようになる前に、さらなる進歩が必要だ」と述べ、中国が AI 開発を加速する必要性を強調しました。